FOMC 様子見姿勢を強調

景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右

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2025年05月08日

  • 経済調査部 主任研究員 矢作 大祐
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆2025年5月6日・7日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが4.25-4.50%と、3会合連続での据え置きとなった。パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、追加関税措置によるインフレ・経済への影響は依然として不確実性が高いとの見解を貫いた。足元では経済が底堅く推移しているとみられることを背景に、パウエル議長は様子見姿勢を維持することが適切であると繰り返した。

◆他方、こうしたFRBの様子見姿勢は、利下げから距離を置くというよりは、中立的なスタンスを示すものと考えられる。パウエル議長は記者会見で、利下げを急ぐ必要はないという、市場にとってはややタカ派的な印象を与える表現を用いた一方で、経済動向に応じた迅速な対応も指摘した。FRBの政策判断の余地を確保するために、パウエル議長はバランス取りに終始したといえよう。

◆なお、金融政策の先行きを占う上で、景気・インフレに対する注目度が高いのはもちろんのこと、金融環境の変化も重要だ。そもそも、FRBが様子見姿勢を継続する理由として、現状の金融環境が適切な状態にあることが前提となる。しかし、4月前半には、米国債利回りの上昇、米ドルの下落、米株価指数の下落と、金融環境が一時急激に悪化した。金融環境の悪化が続けば、景気を大きく冷やす恐れがある。

◆今回のFOMCにおいては、足元の金融環境が4月前半に比べて安定していることから、記者会見においてパウエル議長からは金融環境に関する具体的な言及はなかった。もっとも、金融環境が悪化するリスクは引き続き残る。トランプ大統領による不規則発言はもちろんのこと、相互関税の上乗せ税率をめぐるトランプ政権と各国・地域政府との交渉の動向や、債務上限問題をめぐる米国上下院での議論などによって金融環境の動向は大きく左右され得るだろう。先行きの利下げをめぐっては、景気・インフレの動向に加えて、こうした金融環境の変化にも注意が必要となろう。

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