サマリー
◆2025年4月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+17.7万人と前月から減速したものの、市場予想(Bloomberg調査:同+13.8万人)を上回った。過去分については下方修正され、3カ月移動平均は同+10万人台半ばと昨年末からペースダウンしているものの、政府部門の雇用が抑制され、労働供給面では不法移民の流入が急減していることを踏まえれば、底堅いペースといえる。家計調査については、解雇による失業者数の増加が続いていることは懸念点であるものの、失業率は4.2%と前月から横ばいで安定している。総じて見れば、4月の雇用統計も底堅い結果といえよう。
◆現時点において雇用環境は急激な悪化には至っていないものの、市場は追加関税措置による悪影響がいつ顕在化するかを引き続き警戒している。追加関税措置については、4月5日から各国・地域一律10%のベースライン関税が課されたことに加え、中国には上乗せ関税が課されている。トランプ政権は、一部の追加関税措置の内容をマイルド化したり、適用の先送りをしたりしているものの、従来に比べて実効関税率が上昇することに変わりはない。今後追加関税措置が大規模に緩和されるようなことがなければ、景気は減速感を強めると想定され、雇用が下振れするリスクも高まっている。
◆こうした中で、金融政策の先行きに関して、5月6・7日のFOMCでは政策金利の据え置きが想定される。追加関税措置が景気・雇用に悪影響を及ぼし得る一方で、インフレを再加速させ得ることから、FRBは景気とインフレの両にらみを続けざるを得ない。今回の雇用統計が底堅い結果となり、現時点で関税の雇用への影響は限定的といえることから、FRBが利下げを急ぐことは考えにくいだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日