サマリー
◆追加関税措置を契機に、米国経済は足元で転換点を迎えている。2025年1-3月期の実質GDP成長率に関して、アトランタ連銀が公表するGDP Now(実質GDP成長率のリアルタイム推計値)では、前期比年率でマイナス成長への転落が示された。追加関税実施前の駆け込み輸入の急増が、下振れの主因だ。追加関税実施後の輸入の反動減や民間在庫の増加などで、大和総研は1-3月期も前期比年率+1.3%とプラス成長を維持すると見込むが、個人消費はペースダウンしており、景気の減速感は強い。
◆2025年4-6月期から7-9月期にかけては、追加関税措置による悪影響が本格化し、実質GDP成長率は前期比年率+1%前後と低調となることが想定される。追加関税措置による悪影響が一服する10-12月期以降は回復へと向かうものの、2025年通年の実質GDP成長率見通しは前年比+1.7%と、2月時点の見通しの同+2.3%から下方修正した。なお、インフレへの影響に関しては、追加関税措置に伴うコスト増を反映し、2025年通年のCPI見通しを前年比+3.4%と、2月時点の同+2.9%から上方修正した。
◆追加関税措置による悪影響への懸念が強まる中で、景気下支え策に関しては、減税と利下げが焦点となる。減税に関しては、財政赤字の拡大に対する一部共和党議員の懸念もあり、早期成立の見込みは立っていない。こうした中で、迅速な景気下支え策としてFRBの利下げへの期待は強い。しかし、3月18・19日のFOMCでは2会合連続で金利据え置きとなったことに加えて、2025年の利下げ幅見通しは合計0.50%ptで据え置かれた。FOMC参加者としては、追加関税措置による景気悪化だけでなく、インフレ再加速を警戒せざるを得なかったのだろう。
◆先行きの利下げを巡っては、足元で上昇している期待インフレ率がカギを握る。FRBは当面の間、インフレ抑制に対する厳格な姿勢を維持することで期待インフレ率を安定的に推移させ、年央から年後半にかけての利下げ余地を確保することが想定されよう。
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