サマリー
◆2024年11月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+22.7万人と、ハリケーンからの復興やストライキの終結により伸びが加速し、市場予想(Bloomberg調査:同+22.0万人)を上回った。もっとも雇用者数の基調を3カ月移動平均で見ると、6カ月連続で同+10万人台と、好不調の目安となる同+20万人を下回って推移している。また、製造業の雇用者数は4カ月ぶりにプラスとなったものの、ストライキ終結による押し上げ分を除けば冴えない。失業率に関しては前月から横ばいとの市場予想に反して、4.2%と上昇した。ただし、水準は4%前後とされる自然失業率程度である。また、失業者数の増加の内訳を見ると、レイオフを含む非自発的失業者数は小幅に留まり、非自発的失業以外が中心だった。以上を踏まえ、雇用環境は緩やかな悪化が継続しているとの評価を据え置く。
◆先行きの雇用環境について、特殊要因を除けば緩やかな雇用環境の悪化基調が続いていくとみられるものの、不確実性は高い。大統領選挙を巡る不透明感は選挙の終了に伴い一旦解消したが、懸念はトランプ新政権の政策を巡る不透明感に移る。トランプ新政権は現政権から政策の方向性が大きく変わると見込まれることから、企業が様子見姿勢を続けることで雇用者数の回復は緩やかになり得る。実際にトランプ氏は、11月25日にSNS上でカナダ・メキシコ・中国に対する追加関税措置の可能性を示唆しており、企業の採用行動に影響を与える可能性もある。他方で、トランプ氏の掲げる厳格な不法移民対策が実施されることで、再び労働需給がひっ迫することも想定し得る。
◆12月17・18日に開催されるFOMCについて、市場では11月の雇用統計の結果を受けて25bpの利下げが実施されるとの見方が強まった。もっとも11月の雇用統計は、特殊要因による変動はあるものの、雇用環境は緩やかに悪化しつつも底堅いというFRBの見方を変えるものではなく、追加の示唆は限定的といえる。12月の政策決定やFOMCで公表されるドットチャートはインフレ指標に左右されるとみられ、特に11日公表のCPIが注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日