「トランプ減税」延長、個人税制が影響大

米国大統領選挙(2024):法人税率の軽減の評価も重要な争点か

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2024年09月13日

  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

◆2024年11月5日に実施される米国大統領選挙の争点の一つに、「トランプ減税」の時限立法(個人税制に関連する減税措置の多くは2025年末に失効)の延長の是非が挙げられている。

◆Tax Policy Centerによる、所得階層ごとの調査(2017年12月18日公表)によると、「トランプ減税」の時限立法が全て失効した場合、2027年時点で、過半数の約53%の世帯が増税になる。

◆最も影響が顕著に出るのが中間層であり、約70%の世帯が増税になる。これに対して、超富裕層になると、増税になる世帯は限られる。上位1%の所得階層では、約24%の世帯が増税になる。上位0.1%の所得階層では、増税になる世帯は8%のみである。

◆米国議会予算局(CBO)による、財政関連の調査(2024年5月8日公表)によると、「トランプ減税」の時限立法が全て延長された場合、向こう10年間(2025年から2034年)で、約$4.58兆の財政赤字をもたらす。

◆最も影響が顕著に出るのが、個人税制に関する時限立法の延長であり、約$3.26兆の財政赤字をもたらす。これに対して、法人税制に関する時限立法の延長は、約$0.55兆の財政赤字をもたらすにとどまる。

◆「トランプ減税」では、時限立法以外の重要な変更として、法人税率の軽減がある。その内容は、旧制度における「最高35%」から「一律21%」への軽減である。この法人税率の軽減が、法人税収入にどのような影響を与えたのかについては、議論が分かれている。

◆民主党は、法人税率を現行の「21%」から「28%」に引き上げる旨提案している。そのため、「トランプ減税」の時限立法の延長の是非のみならず、法人税率の軽減の評価についても、選挙の重要な争点となって然るべきである。

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