サマリー
◆2024年7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+11.4万人と市場予想(Bloomberg調査:同+17.5万人)を下回り、2カ月連続で減速した。失業率に関しても、前月差+0.2%ptの4.3%と4カ月連続で上昇し、市場予想(Bloomberg調査:4.1%)を上回る(悪い)結果となった。7月の雇用統計ではレイオフを含む非自発的失業が増加したことや、失業率が「サーム・ルール」の基準に達したことが、雇用環境が急速に悪化している可能性を意識させた。
◆ただし、非自発的失業の増加は3カ月ぶりであり、均してみれば緩やかな増加ペースに留まっている。そして、7月初めにテキサス州など米国南部を襲ったハリケーン「ベリル」の影響も無視できない。BLS(米労働省労働統計局)はハリケーン「ベリル」の影響は軽微と説明しているが、労働時間は減少しており、悪天候による休業者数は46.1万人と、7月においては1976年の統計公表以来最多となった。雇用環境は弱含みであるとみられるが、急激な雇用環境の悪化と評価すべきか否かに関しては、8月16日に公表される州別の失業率や9月6日に公表される8月の雇用統計等も併せて検討すべきだろう。
◆金融政策運営に関して、7月のFOMC(連邦公開市場委員会)声明文公表後の記者会見でパウエルFRB議長は、政策変更はデータ次第との姿勢を継続する一方で、利下げに向けた地ならしをするような表現を繰り返した。パウエル議長の会見は、9月のFOMCでの利下げ開始の可能性を感じさせる内容であったといえる。他方で、9月のFOMCでの利下げは市場も織り込み済みであり、焦点は早くもその後の利下げのペースへと移っている。6月のFOMCで公表されたドットチャート以上のペースで利下げが行われるには、FOMC参加者の想定以上にインフレが減速しているか、雇用環境が冷え込んでいることが前提となる。その点、7月の雇用統計では、失業率の結果が6月のFOMC参加者の見通し(2024年10-12月期中央値:4.0%)を既に上回っており、利下げペースを速める要因になり得るだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ2.0で加速する人手不足を克服できるか
~投資増による生産性向上への期待と課題~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
米国経済見通し 過去とは異なる政府閉鎖
政府閉鎖による悪影響は従来よりも長期化する恐れ
2025年10月21日
-
米国、設備投資費用の即時償却を復活・拡張
製造業・情報産業の新規投資、及び対米直接投資の増加要因か
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
公共施設マネジメントと公会計
〜機能する行政評価〜『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
トランプ2.0で加速する人手不足を克服できるか
~投資増による生産性向上への期待と課題~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
欧州投資家保護規制強化とAM・WM業界への影響
~規制対応からビジネスモデルの変革へ~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
誰が暗号資産(仮想通貨)を保有しているのか
~暗号資産関連サービス提供に向けた投資家保護・マーケティングへの示唆~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
純債務って何?高市総理が目指す財政指標の意味
2025年10月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

