2024年07月11日
サマリー
◆2024年6月21日、Bloombergは、英大手銀行スタンダードチャータードがビットコインとイーサリアムのトレーディングデスクを設置しようとしている旨報じている。これが実現すれば、スタンダードチャータードは、世界で初めて暗号資産の現物取引に参入するグローバル銀行となる。
◆また、同記事内では、米国証券取引委員会(SEC)が2024年1月にビットコイン現物ETFを承認したことが、大手銀行による暗号資産市場への参入を促している要因として挙げられている。
◆一方で、同記事内では、これまで大手銀行が暗号資産の現物取引に参入していない理由として、厳格なバーゼル規制(SCO60)の存在が挙げられている。
◆米国の株式保有報告書にあたる「フォーム13F」によると、米国の大手銀行26行のうち、2024年3月末時点でビットコイン現物ETFを保有していることが判明したのは、10行であった。
◆SCO60の概要を見る限り、将来的なバーゼル規制の観点からは、大手銀行によるビットコイン現物ETFの保有を取り巻く環境は「逆風」でしかない。というのも、ビットコイン現物ETF保有に対して適用される保守的な資本賦課(リスクウェイト1,250%)は、事実上、「自己資本控除」に他ならないからである。
◆そうした「逆風」が予見可能な最中、大手銀行のモルガン・スタンレーが、「フォーム13F」の提出者中、8番目に多い、2.7億ドル超のビットコイン現物ETF保有を報告していたことは興味深い。この事実からは、大手銀行にとって、将来的なバーゼル規制上の「逆風」を考慮してもなお、ビットコイン現物ETFの保有にメリットがあることがうかがえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
米国経済見通し 関税政策はマイルド化へ
トランプ大統領に対する世論と共和党内の不満の高まりが抑止力に
2025年11月25日
-
政府閉鎖前の雇用環境は緩やかな悪化が継続
2025年9月米雇用統計:雇用者数は増加に転じるも、回復は緩やか
2025年11月21日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日


