ビットコイン現物ETF保有とバーゼル規制

保守的な資本賦課にもかかわらず、2.7億ドル超保有の大手銀行あり

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  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

◆2024年6月21日、Bloombergは、英大手銀行スタンダードチャータードがビットコインとイーサリアムのトレーディングデスクを設置しようとしている旨報じている。これが実現すれば、スタンダードチャータードは、世界で初めて暗号資産の現物取引に参入するグローバル銀行となる。

◆また、同記事内では、米国証券取引委員会(SEC)が2024年1月にビットコイン現物ETFを承認したことが、大手銀行による暗号資産市場への参入を促している要因として挙げられている。

◆一方で、同記事内では、これまで大手銀行が暗号資産の現物取引に参入していない理由として、厳格なバーゼル規制(SCO60)の存在が挙げられている。

◆米国の株式保有報告書にあたる「フォーム13F」によると、米国の大手銀行26行のうち、2024年3月末時点でビットコイン現物ETFを保有していることが判明したのは、10行であった。

◆SCO60の概要を見る限り、将来的なバーゼル規制の観点からは、大手銀行によるビットコイン現物ETFの保有を取り巻く環境は「逆風」でしかない。というのも、ビットコイン現物ETF保有に対して適用される保守的な資本賦課(リスクウェイト1,250%)は、事実上、「自己資本控除」に他ならないからである。

◆そうした「逆風」が予見可能な最中、大手銀行のモルガン・スタンレーが、「フォーム13F」の提出者中、8番目に多い、2.7億ドル超のビットコイン現物ETF保有を報告していたことは興味深い。この事実からは、大手銀行にとって、将来的なバーゼル規制上の「逆風」を考慮してもなお、ビットコイン現物ETFの保有にメリットがあることがうかがえる。

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