サマリー
◆2024年11月5日の米大統領選挙(本選)まで8カ月を切った。民主党は現職のジョー・バイデン氏、共和党は前任のドナルド・トランプ氏が候補者として選出される予定である。本選に向けて両者の支持率を見ると、トランプ氏がバイデン氏を上回っているが、その差は僅差といえる。トランプ氏にとっては、共和党内の反トランプ派の受け皿となっていたニッキー・ヘイリー氏の支持者を取り込むことが本選で勝利するためのカギとなる。他方で、バイデン氏にとっては、景気を底堅く維持しつつ、インフレが減速するという米国経済のソフトランディングを実現し、景気の良し悪しを重視する無党派層にアピールする必要があるだろう。
◆本選の結果が現時点で見通しづらい中では、トランプ氏、バイデン氏のそれぞれが勝利した場合の米国経済のリスク要因を整理し、どちらが勝利してもよいよう準備しておく必要があるだろう。トランプ氏が勝利した場合には、移民抑制策や中国に対する輸入規制の強化によるインフレ圧力の上昇がリスク要因といえる。これらの政策はトランプ前政権時にも実施されたことから意外性は少ないものの、高インフレが懸念される現在の米国においては引き締め的な金融環境を長期化させ、金融システムに負荷をかけたり、結果として景気の大幅な調整を引き起こしたりする恐れがある。
◆バイデン氏が勝利した場合には、現在の政策の継続が想定される点はポジティブといえる。しかし、トランプ減税の期限切れによる高所得層への増税が個人消費を下押ししたり、厳格なAI規制の導入によってイノベーションが抑制され、生成AIへの期待を背景に盛り上がる株式市場にも水を差したりする恐れがある。こうした政策に伴う米国経済の活力の低下は、バイデン氏が再選した際のリスク要因として注意が必要だろう。
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