サマリー
◆足下の米国経済に関する最大の注目点は、米10年債利回りの上昇だ。堅調な景気と金融引き締めの長期化観測を背景とした期待短期金利の高止まりに加え、国債需給の悪化を契機としたタームプレミアムの上昇によって米10年債利回りは10月19日にほぼ5.0%まで上昇した。こうした中、FOMC参加者内で、長期金利の上昇によって追加利上げの必要性が低下しているとの認識が共有されているようだ。
◆しかし、9月のCPIやPPIのヘッドラインが市場予想を上回ったように、インフレの高止まり懸念は根強い。長期金利の上昇によって景気が減速し、需給ギャップが緩和すると想定しても、従業員の待遇改善要求に伴う賃金上昇率の高止まりや地政学リスクの高まりによるエネルギー価格上昇などが、インフレの減速ペースを遅らせるかもしれない。
◆当面のFOMCの基本シナリオとしては、追加利上げが必要か様子見をしつつ、インフレが順調に減速していくよう引き締め的な金融環境を維持するために、政策金利をより長期間にわたって高水準に維持することが現時点の選択肢として優勢のようだ。しかし、引き締め的な金融環境を長期間にわたって維持することは、金融システムに負荷をかけ得る。結果的に2006年から2008年にかけてのように、景気の調整幅が大きくなる可能性に注意が必要だ。
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