サマリー
◆目下、米国経済の懸案となっているのは、政府債務上限問題である。2023年1月に政府債務が上限に達した後、財務省は特別措置を通じた資金のやりくりを続けてきたが、6月初旬にも資金繰りが厳しくなり、デフォルトとなる可能性がある。デフォルトを避けるためには、債務上限の引き上げや上限の適用一時停止といった議会の承認が必要だ。無条件での債務上限引き上げを目指す民主党と、引き上げに当たって政府支出の削減を求める共和党の間で意見の相違がある。こうした中、民主・共和党の指導部(バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長等)での議論が続いており、歩み寄りの兆しも見られている。
◆とはいえ、仮に両党の指導部間で何らかの合意に達したとしても、議会の承認が得られるかは別問題である。共和党の極右派議員連盟はマッカーシー下院議長に対して安易に妥協しないよう圧力をかけており、民主党のリベラル派議員は憲法修正第14条発動による強行突破の準備をするようバイデン政権に要請している。上下院で多数党が異なるねじれ議会であることだけでも議論の集約が難しい中で、上下院での両党の議席数の差が僅差であることから、政党間だけでなく政党内でも綱引きが激しくなり、法案通過のハードルを高めているといえる。
◆最終的には債務上限の引き上げに合意することがベースシナリオではあるものの、資金繰りが厳しくなるぎりぎりまで民主・共和党間の攻防は続くことが想定される。たとえデフォルトが回避されたとしても、こうした政治の混乱を背景とした不透明感が消費者マインドの下押し要因となり、米国経済を下支えしてきた個人消費が落ち込むことになれば、マイナス成長に転じる可能性は高まることになるだろう。
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