サマリー
◆2023年5月2日・5月3日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが、従来の4.75-5.00%から5.00-5.25%へと0.25%pt引き上げられた。FOMC参加者が事前に今回のFOMCでの0.25%ptの利上げを支持すると示唆していたことから、市場参加者にとって想定通りの結果であったといえる。
◆注目された銀行不安に対する評価のアップデートに関して、パウエルFRB議長は、銀行システムは全体として強力な資本を有しており、手元流動性も改善が見られるとの見解を示した。また、中堅銀行に対する監督・規制の強化を積極的に進めていく姿勢も示した。他方で、銀行不安がもたらす景気への影響に関しては、依然不透明との見方を維持した。
◆続く注目点である、今後の利上げの見通しに関しては、これまで利上げを示唆してきたフォワードガイダンスを削除し、今回の利上げをもって一旦打ち止めという方針が示された。他方で、先行きの利上げの再開に関しては、パウエル議長はデータ次第と含みを持たせた。
◆市場の期待が高い2023年内の利下げの可能性に関しては、景気やインフレ見合いとなる。パウエル議長は、インフレが想定以上に迅速に減速していかない限り、可能性は低いと考えているようだ。利下げ可能性を高めるとすれば、銀行不安の更なる広がりに伴うマイナス成長といった景気の想定以上の下振れだろう。ただし、利下げが可能になるとはいえ、市場も銀行不安の更なる広がりは本望ではないだろう。なお、FOMCを契機に銀行不安が強まる可能性があることから、FOMCは一層の慎重なコミュニケーションが望まれよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日