サマリー
◆2022年8月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+31.5万人となり、市場予想を小幅に上回った。失業率は同+0.2%ptの3.7%と市場予想を上回る(悪化)サプライズとなったものの、失業率の押し上げ要因は非労働力人口の減少(=労働市場への参入増)であり、労働需給が依然としてタイトな中ではポジティブな要素といえる。
◆最大の懸念材料であるインフレ加速に関して、賃金上昇率が前月比で減速した点はポジティブな結果といえる。労働参加の増加が今後も続けば、賃金上昇圧力、ひいてはインフレ圧力が徐々に和らいでいくことが期待される。
◆雇用環境の先行きに関して、新規失業保険申請件数が8月半ば以降は減速傾向となっているように足下の雇用環境も堅調なままである。こうした雇用環境の堅調さは、豊富な労働需要に支えられている。求人件数が失業者数の2倍弱の水準である現状から考えると、当面雇用環境の大幅な悪化は想定しづらいだろう。
◆金融政策運営に関して、今回の雇用統計で賃金上昇率が前月比で減速した点は先行きにおける賃金上昇圧力が和らいでいくことを期待させるものであったものの、前年比ベースでは依然として高止まりしており、現時点においては利上げ幅の縮小を許容できるほどの状況にはない。そして、雇用環境は堅調さを維持している点も、景気が次回FOMCでの0.75%ptの利上げにストップをかけるような材料になりにくいといえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日