サマリー
◆7月の主要物価指標が市場予想を下回ったことで、市場ではインフレが頭打ちしたとの認識が広まりつつある。とりわけ、CPIに関しては、ヘッドラインに加えて、コアも減速したことで、市場に安堵感が生まれたわけだが、今後も順調に減速していくと楽観視するのは尚早だろう。住宅価格を含む、短期的に価格変動しにくい品目を集めた粘着価格CPIは上昇し続けている。粘着価格CPIが減速しなければ、消費者の期待インフレが高水準で定着し、インフレが高止まりするリスクは残ることになる。
◆インフレ頭打ちとの認識が広まる中で、9月のFOMCで利上げ幅が0.50%ptに縮小されるとの観測が強まっている。もっとも、インフレが高止まりするリスクは残っており、利上げ幅の縮小は予断を許さない。利上げ幅が縮小されるのは、米国経済の屋台骨である個人消費が腰折れし、景気後退リスクが高まる場合である。他方、足下の雇用環境の堅調さを踏まえれば、短期的には所得面主導で個人消費が大きく落ち込むことは考えにくい。
◆FOMC参加者は、7月のCPIが予想よりも減速したことを望ましい傾向と評価する一方で、インフレが高止まりするリスクに関しては共通して懸念を示しており、利上げ幅の縮小に向けたハードルは高い。FRBがインフレ抑制に関するリスク管理の観点から大幅利上げを前倒しで実施してきたこれまでの経緯を踏まえれば、インフレが依然高水準にある中では、利上げができる経済状況において、0.75%ptの大幅利上げを継続することが選好される可能性があることを市場は過小評価してはならないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日