サマリー
◆2022年6月14・15日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが、従来の0.75-1.00%から1.50-1.75%へと0.75%pt引き上げられた。0.75%ptの利上げは、1994年11月以来の大幅利上げである。とはいえ、0.75%ptの利上げは既に織り込み済みであり、市場参加者にとってサプライズとはならなかった。
◆今回のFOMCの声明文では顕著な修正は見られなかったが、パウエル議長の記者会見は総じてタカ派的な印象を与えるものであった。FOMCは、労働市場が非常にタイトで、インフレ率は高すぎるとの認識の下で、0.75%ptの利上げに踏み切った。7月のFOMCに関しても、インフレ指標が明確に減速傾向を示さなければ、0.75%ptの利上げを継続する可能性が高い。
◆今回公表されたドットチャートを見ると、2022年末のFF金利水準(中央値:3.375%)は、7月のFOMCで0.75%pt、9月のFOMCで0.50%pt、11、12月のFOMCでそれぞれ0.25%ptずつ利上げを実施することで実現可能な金利水準である。年内のFOMCが残り4回となる中でも、中央値以上の水準を予想するFOMC参加者は5名おり、インフレ状況によっては更なるタカ派化もあり得るだろう。
◆今回のFOMCで0.75%ptの利上げへと踏み切ったことで、FOMCはインフレ加速を断固として許さないとの意思表示をしたといえる。しかし、0.75%ptの利上げは、FOMCにとって「もろ刃の剣」にもなり得る。6月のCPIや期待インフレ率がさらに加速すれば、次は1.00%ptの利上げと市場が連想することになる。市場での連想が広がる中で、金融環境が過度に引き締まり、景気に大幅な悪影響が及べば、利上げを継続できるかも危ぶまれることになる。今回の0.75%ptの利上げはFOMCの金融政策運営の難易度を一層高める契機になり得るともいえるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
米国経済見通し 関税政策はマイルド化へ
トランプ大統領に対する世論と共和党内の不満の高まりが抑止力に
2025年11月25日
-
政府閉鎖前の雇用環境は緩やかな悪化が継続
2025年9月米雇用統計:雇用者数は増加に転じるも、回復は緩やか
2025年11月21日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

