サマリー
◆2021年6月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+85.0万人、失業率は同+0.1%pt上昇の5.9%となった。雇用者数は市場予想を上回るポジティブな結果であったが、失業率は更なる低下が予想されていたことからやや期待外れの結果といえる。失業率の上昇について、自発的失業や再参入などポジティブな失業が増えている点は好感できる。しかし、長期失業者が増えており、企業との間に雇用のミスマッチが発生している可能性がある点は注意を要する。
◆加えて、就業率や労働参加率は伸び悩んでおり、労働供給制約が引き続き課題といえる。こうした中、9月に控える失業保険の給付増額の期限切れが労働供給の拡大を促進することが期待される。しかし、退職者の職場復帰が進まないことに伴う就業率・労働参加率の下方シフトや、長期失業者による雇用のミスマッチを背景に、労働需給が失業率以上にタイトになる可能性がある。
◆今回の雇用統計で、雇用者数の増勢が強まったことで、7月のFOMC以降テーパリングに向けた議論が本格化していくことが想定される。FOMC参加者が注視するインフレ加速に関して、労働需給がタイトであれば、賃金上昇率が高止まりし、インフレ圧力となる可能性もあろう。労働供給制約が長期化した場合には、FOMC参加者のインフレ加速の長期化懸念は募り、タカ派的な姿勢を強める可能性がある点に注意が必要だろう。
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