サマリー
◆9月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+66.1万人、失業率は7.9%となった。失業率は予想以上に改善し、雇用者数も民間部門を中心に堅調であったことから、雇用環境の改善は継続していると評価できよう。ただし、非労働力人口は増加し、労働市場からの退出が増えたことや、解雇による失業者が増えたことなどには留意すべきである。
◆雇用環境の先行きに関しては、新型コロナウイルスの感染再拡大による悪影響が懸念点である。失業率はこれまで順調に低下(改善)してきたが、黒人やヒスパニックの失業率は依然として10%を超える高水準で推移している。失業期間が長引くほどスキルが陳腐化し、就業することが難しくなる。感染再拡大によって雇用環境が厳しくなれば再就職までの道のりは一層遠のくものと考えられる。失業率の改善ペースは緩やかなものとなり、個人消費などの下押し圧力になりかねないだろう。
◆9月の雇用統計を踏まえれば、11月のFOMCにおいて政策の変更は考えにくい。他方で、大統領・議会選挙を控えて、追加的な財政支援の見通しは付かないことから、景気の下振れリスクに直面すれば、金融政策に焦点が当てられることになる。こうした中、感染再拡大による景気の悪化懸念の高まり、及び、不確実性の高い大統領選挙・議会選挙を背景とした金融・資本市場の不安定化が、金融政策運営を左右する要因となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米銀最大手、9.7兆ドルの国債保有増加余地
レバレッジ比率緩和、米国国債市場の機能改善をもたらすか
2025年12月16日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
米国経済見通し 関税政策はマイルド化へ
トランプ大統領に対する世論と共和党内の不満の高まりが抑止力に
2025年11月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

