サマリー
◆6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+480.0万人、失業率は11.1%と、いずれも市場予想(Bloomberg調査:非農業部門雇用者数同+305.8万人、失業率12.5%)を上回る改善幅となった。市場予想を良い意味で裏切る結果が2ヵ月連続で続いており、雇用環境の改善が想定以上のスピードで進んでいるともいえる。
◆今回の雇用統計が金融政策運営に変更をもたらすことは考えにくい。7月1日に公表された6月のFOMC議事録の中で、米国経済が4月を底に回復の兆しを見せていることを認める一方、依然として先行きに対する不透明性の高さを指摘している。FRBは慎重なスタンスを維持したままである。
◆他方で、雇用統計の良好な結果が、更なる財政支援に向けた機運を低下させ得ることが懸念点といえる。7月末には失業保険の増額期限が到来することになるが、共和党は様子見姿勢を続けている。ただし、失業保険の増額期限の延長が真に必要なのは、共和党なのかもしれない。州知事が共和党の州では新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、経済活動の再開(リオープン)を緩やかに進めざるを得ないからである。大統領選挙を控え、共和党・民主党間の合意に向けたハードルは高まるが、新型コロナウイルスの感染再拡大という共通の敵の前で党派を超えた政治的決断をすることができるかが注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率+3.0%とプラスに転じる
2025年4-6月期米GDP:輸入の反動減が押し上げた一方、内需は減速
2025年08月01日
-
FOMC 9月利下げに向けて含みを持たせる
インフレ統計の歪みと雇用統計の弱含みに注目
2025年07月31日
-
米国経済見通し 関税激化はいつまでか
米国内の不満の高まりを受け、関税激化の長期化は考えにくい
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日