サマリー
◆2020年6月9・10日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジを、0.00-0.25%に据え置いた。流動性供給策に関する修正の有無が注目されていたが、声明文の中で現在の米国債等の購入ペースを継続することが表明された。金融環境は改善しても、経済の下振れリスクが大きい中で、FRBは様子見姿勢を継続したと考えられる。
◆今回の焦点の一つであった、FOMC参加者による経済見通し(SEP)においては、短期・中期について大きなサプライズはない。ただし、長期見通しに関しては、実質GDP成長率の中央値が下がり、失業率の大勢見通しの下限値が切り上げられた。新型コロナウイルスによる悪影響が長期にわたって続くことを懸念するFRBのスタンスが確認できた。
◆経済見通しと同様に注目点である、FOMC参加者のFF金利の見通し(ドットチャート)に関しては、2020年末から2022年末まで、中央値は0.125%と現在のFF金利水準が維持されるとの予想が示された。ドットチャートの形状を見ても、ばらつきは少なく、実質ゼロ金利を当面の間維持するという見方がFOMC参加者の中でコンセンサスとなっているといえる。
◆今回のFOMCでは、金融政策は据え置かれ、経済見通しやドットチャートも概ね想定の範囲内であった。ただし、金融政策及びフォワードガイダンスの先行きを巡って、地ならしが始まっている。マイナス金利が否定されたこと、流動性供給策の変更のハードルの高さ、イールドカーブコントロールに関する議論が進められていること、が示唆されたといえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日