サマリー
◆2019年12月の非農業部門雇用者数は前月差+14.5万人となり、市場予想(Bloomberg調査:同+16.0万人)を下回る結果となった。やや期待外れの感もあるが、11月の雇用者数が20万人を超えて大きく増加したことや、失業率が歴史的低水準で推移する中雇用者数は伸びにくくなっていると考えられることを踏まえれば、12月の結果を悲観的に捉えるべきではない。
◆家計調査による12月の失業率は3.5%と、市場予想通りであった。また、広義の失業率(U-6) は、同▲0.2%pt低下の6.7%と、公表が開始された1994年以来史上最も低い水準となった。賃金については、12月の民間部門の平均時給は前月比+0.1%となり、市場予想(Bloomberg調査:同+0.3%)を下回る結果となった。労働需給がタイトな中で、足元の賃金上昇率はやや物足りないものといえる。
◆米国の雇用環境の先行きに関しては、雇用者数の増加ペースは巡航速度に戻ったと考えられ、今回と同程度の雇用者数の伸びが続く公算が大きい。賃金に関しては、賃金水準が相対的に低い業種が増加した結果、賃金上昇率のペースを抑制したと考えられる。賃金の先行きを考える上では、各業種の賃金自体の伸びだけでなく、賃金水準の高い業種の雇用者数の動向も注目される。
◆1月28・29日に予定されるFOMC(連邦公開市場委員会)に関しては、FF金利は据え置きとなる公算が大きい。12月のFOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長は「我々の見通しを変更させる事態が発生した場合には、状況に応じて対応する。金融政策にあらかじめ決まった道筋はない」と説明したが、今回の雇用統計の結果はFRBの見通しを変更させる要因にはならないと考えられる。
◆ただし、2月に公表される雇用統計の年次改定には留意が必要だろう。2019年8月に公表された年次改定の暫定推計値では、2019年3月までの1年間の非農業部門雇用者数が50.1万人下方修正された。雇用統計の年次改定を契機に、FOMC参加者による雇用環境の見方が弱気になり、ハト派的なスタンスが強まりうる可能性があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日