サマリー
◆米国経済、企業業績の状況は決して悪い状態にあるわけではないにもかかわらず、株価の調整が続いているのは、足下の景気の好調さよりも、先行きの減速リスクが強く意識されているためと考えられる。
◆米国を取り巻くリスクの筆頭である、米中貿易摩擦については、解決に向けた道筋が全く見えない状況が続いている。11月30日~12月1日に行われるG20首脳会議で、トランプ大統領と習近平国家主席の米中首脳会談が予定されているが、急速な歩み寄りは期待するべきではないだろう。
◆国内のリスク要因として、米国内では金利上昇による悪影響への懸念が高まっている。とりわけ金利上昇による影響を受けやすい住宅市場では、速いペースでの住宅価格の上昇に加えて、住宅ローン金利が上昇したことで販売、建設が既に減少し始めている。
◆こうしたリスク要因に加えて、2018年の堅調な景気拡大を支える要因になったと考えられる税制改革による効果が、2019年以降、減衰していくことなども踏まえると、米国経済の減速はやはり避けられないだろう。しかし、だからといって米国経済が景気後退に陥る可能性が極端に高まっているわけではない。
◆米国経済最大の成長ドライバーである、個人消費の拡大と雇用者数増加の相互作用による拡大は今後も続く公算が大きい。また、米国では金融政策上のバッファーがあることも景気拡大の持続を支援する材料となる。景気の下振れリスクが高まった場合には、利上げを早期に打ち止める可能性が高まろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日