サマリー
◆2018年5月の非農業部門雇用者数は前月差+22.3万人と、前月から増加幅が拡大、市場予想(Bloomberg調査:同+19.0万人)を上回る良好な結果となった。小売業、娯楽サービス業の個人消費関連業種の好調さなどを背景に、サービス部門の雇用者数が前月から大きく加速したことが全体を押し上げた。
◆家計調査による5月の失業率は前月差▲0.1%pt低下の3.8%となり、横ばいを見込んでいた市場予想を下回る結果となった。失業率は2000年4月以来の低水準であり、労働市場のひっ迫感が一層強まっていることが確認された。ただし、労働参加率は同▲0.1%ptと3ヵ月連続で低下していることから、失業率は前月から低下しつつも労働市場全体としては強弱入り混じる結果であったと言える。
◆5月の民間部門の平均時給は、前月から8セント上昇、前月比+0.3%となり、市場予想(同+0.2%)を上回った。また、前年比変化率も+2.7%と市場予想(同+2.6%)を上回る結果となった。失業率の低下傾向が続き、労働需給のひっ迫感が深刻さを増す中においては、賃金上昇率はなおも物足りないと言わざるを得ないが、少なくとも前向きな結果であったと捉えられる。
◆労働市場の先行きとしては、企業部門による旺盛な労働需要を背景に雇用者数の増加基調が続くと考えられる。ただし、企業部門を取り巻く環境として、関税の導入などを背景とした仕入価格の上昇に対する懸念が高まっていることには留意が必要である。また、仮に企業の労働需要が堅調さを維持したとしても、労働供給がボトルネックとなり雇用者数の伸びが加速するとは考え難い。以前から指摘されてきた企業の人手不足は、より多くの業種、職種に広がりつつある。
◆今回の雇用統計を受け、6月12~13日に開催される次回のFOMC(連邦公開市場委員会)で、利上げが実施されるという従来の見方に変更はない。インフレ率が目標である2%に達している中での、力強い雇用者数の伸び、失業率の更なる低下は、FRB(連邦準備制度理事会)による追加利上げを後押しするだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
GENIUS法、銀行とステーブルコインの邂逅
ステーブルコインは支払決済手段として普及するのか?
2025年08月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日