サマリー
◆米国による関税を発端に貿易戦争が勃発した場合、米国、および世界経済への悪影響は免れないだろう。しかし、個人消費を中心とする内需主導の経済構造を持つ米国は、相対的に保護貿易による悪影響を受けづらいと考えられる。加えて、2017年末に成立した税制改革による後押しもあり、短期的には米国の経済成長率は加速する公算が大きい。力強い景気拡大が続くことへの自信は、トランプ大統領が強硬に保護貿易を推し進める要因の1つになっていると考えられる。
◆また、税制改革の実施によって、経済成長率の加速を踏まえても連邦政府の財政収支は悪化が続く公算が大きく、財政を活用した政策は実行しづらい状況にある。関税の導入は直接的には財政収支を改善させると考えられ、財政上の縛りがないという意味でも、政権にとっては合理的な選択とも言える。保護主義的な通商政策は支持層へのアピールとの見方が一般的であり、中間選挙までは、中国向けを中心に強硬な態度で通商交渉に臨む可能性が高いだろう。
◆2018年1-3月期は個人消費の減速を主因に、実質GDP成長率は前期比年率+2.0%と、前期の同+2.9%から減速すると予想する。しかし、4-6月期には個人消費の再加速によって、GDP成長率が再び高まる見通しである。税還付の遅れという一時的要因の剥落に加え、税制改革による所得の押し上げも個人消費の再加速を後押しすることになろう。通商政策を巡る不透明感が景気を下押しするリスクは高まっているが、内需主導の成長により、2019年まで潜在成長率を上回る高めの成長が続くという従来の景気シナリオに変更はない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 駆け込みの反動一巡後の注目点は?
追加関税措置次第となる中、トランプ大統領を“TACO”と嘲るべからず
2025年06月24日
-
FOMC 様子見姿勢を継続
経済指標の基調の捉えにくさと正確性への懸念は利下げ遅延リスクを高める
2025年06月19日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日