サマリー
◆2017年7-9月期GDP二次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2017年度が前年度比+1.8%(前回:同+1.6%)、2018年度が同+1.1%(同:同+1.2%)、2019年度が同+0.6%(同:同+0.6%)である。日本経済は、①堅調な外需、②在庫投資、③耐久財の買い替え需要に支えられ、成長の加速を続けてきた。しかしこれら三つの要因が剥落することで2018年の日本経済は緩やかに減速し、巡航速度に回帰する見通しだ。
◆日本経済と同様に、2017年の世界経済は①米国を中心とした在庫の回復・積み増し、②欧州を中心とした財政拡張(緊縮ペースの鈍化)、③共産党大会を控えた中国経済の加速といった好材料に支えられる形で成長加速を実現している。しかし、これらの好材料は総じて、2018年以降剥落に向かう公算が大きい。もっとも、これらの加速要因の剥落は日本経済および世界経済の緩やかな減速を意味するにすぎず、過度の懸念は不要だろう。
◆外需主導の成長が2018年度以降一旦ストップする公算が大きい中、成長を下支えする役割を担うのが内需だ。2017年度の消費増加の主要因は、過去の消費抑制要因の消失であった。2018年度以降この効果は出尽くしとなり、概ね雇用者報酬の改善に即したペースでの消費の拡大が続く見通しである。ただし、局所的な賃金インフレの萌芽が見られ始めている一方で、この効果を相殺する要因が残されており、「内需の好循環」に至るほどの本格的な雇用者報酬の改善が始まるまでには未だ時間を要するだろう。
◆五年間に亘る景気拡大の結果、需給ギャップはプラス圏に浮上し、供給制約の限界に到達する産業が増加している。すなわち、売上「数量」の増加にのみ依存した成長を維持することは難しくなり、かわりに販売「価格」の向上が、名目ベースでみた成長余力を左右する重要な鍵を握ることになる。こうした状況を背景として、弊社の経済見通しは、実質成長率の減速に比べて、名目成長率の減速(17年度+1.9%⇒18年度+1.5%)が小幅なものにとどまるとみている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日