サマリー
◆2017年5月に下院を通過したオバマケア代替法案は、上院での採決を前に修正が加えられたが、共和党内の票がまとまらず否決された。そこで、まずオバマケアの廃止法案を成立させようと採決が行われたが、この廃止法案も否決される。7月末には、オバマケアの大部分を残し、一部を修正しただけにすぎない「スキニー撤廃法案」も否決されるなど、オバマケア代替法案の上院通過は不透明となっている。
◆このように、オバマケア代替法案を巡り、上下両院で共和党内の党派対立が激化している。上下両院で共和党が過半数を確保しているにもかかわらず、なぜ党内の調整が難航しているのかについて、政治的な背景も含めて現状の議論を整理したい。
◆米国の医療制度改革は、連邦政府による市民生活への介入を容認するのか、または市場メカニズムに委ねるのか、というアメリカの国家像を巡る政治問題とも重なるため、コンセンサスが得られにくく、改革を進めるのは容易ではないと言える。
◆トランプ大統領は、オバマケア代替法案の成立によって浮いた財源を法人減税などの税制改革に充てる計画を示していただけに、財源不足によって減税等の実現が不透明となれば、2018年に控える議会中間選挙への影響は必至と言える。共和党内の抵抗勢力をどこまでまとめ上げることができるのか、トランプ大統領の手腕が問われている。
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