米国経済見通し 揺れるトランプ政権

予算教書を漸く発表も、実現可能性は低い

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2017年05月24日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆トランプ大統領は5月23日に予算教書を議会に提出し、これまで詳細が不明だったトランプ政権による財政政策の中身が漸く明らかとなった。今回提出された予算教書の最大のポイントは、歳出の削減と歳入の増加によって、10年間で連邦財政収支を黒字化することである。ただし、財政収支の前提となる経済成長率は、2020年代には3%まで加速する見通しとなっており、非常に楽観的である。歳入の増加、財政収支の改善については割り引いてみる必要があろう。


◆そもそも大統領による予算教書はあくまで議会に対する提案であり、実際に議会で作成される予算案は今回発表された予算教書と大きく異なったものとなる可能性が高いだろう。2018会計年度が始まる2017年10月までに残された時間は限られている。加えて、コミーFBI前長官の解任などをきっかけとしたロシアとの共謀を巡る疑惑で、政策の進展が遅れる可能性は一層高まっている。ただし、足下の米国経済は政策効果を抜きにしても底堅く、政治の混乱をきっかけに景気が急速に悪化するリスクは低いだろう。


◆FOMC参加者は4-6月期の成長率の再加速を見込んでいる。それが実際の統計で確認されれば、3月のFOMCで示されたように年内にあと2回の利上げを実施するのが基本シナリオになる。6月のFOMCまでに雇用統計はもう一度公表されるが、雇用者数の伸びが極端に減速しないことに加えて、賃金上昇率の減速に歯止めが掛かるか否かが最大の注目点である。

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