サマリー
◆トランプ大統領は5月23日に予算教書を議会に提出し、これまで詳細が不明だったトランプ政権による財政政策の中身が漸く明らかとなった。今回提出された予算教書の最大のポイントは、歳出の削減と歳入の増加によって、10年間で連邦財政収支を黒字化することである。ただし、財政収支の前提となる経済成長率は、2020年代には3%まで加速する見通しとなっており、非常に楽観的である。歳入の増加、財政収支の改善については割り引いてみる必要があろう。
◆そもそも大統領による予算教書はあくまで議会に対する提案であり、実際に議会で作成される予算案は今回発表された予算教書と大きく異なったものとなる可能性が高いだろう。2018会計年度が始まる2017年10月までに残された時間は限られている。加えて、コミーFBI前長官の解任などをきっかけとしたロシアとの共謀を巡る疑惑で、政策の進展が遅れる可能性は一層高まっている。ただし、足下の米国経済は政策効果を抜きにしても底堅く、政治の混乱をきっかけに景気が急速に悪化するリスクは低いだろう。
◆FOMC参加者は4-6月期の成長率の再加速を見込んでいる。それが実際の統計で確認されれば、3月のFOMCで示されたように年内にあと2回の利上げを実施するのが基本シナリオになる。6月のFOMCまでに雇用統計はもう一度公表されるが、雇用者数の伸びが極端に減速しないことに加えて、賃金上昇率の減速に歯止めが掛かるか否かが最大の注目点である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日