トランプ政権下での米国経済

『大和総研調査季報』 2017年1月新春号 Vol.25

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2017年03月01日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

2016年11月の大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降、トランプ氏の政策に対する期待感は大きく高まっている。トランプ氏による減税や大型インフラ投資といった拡張的な財政政策は、2017年末頃から実行され始めるとみられ、米国の成長率を再加速させる要因となろう。ただし、トランプ氏による政策案は財政収支を大幅に悪化させることに加え、大型のインフラ投資については伝統的な共和党の考え方に反する政策である。政策が実行されるには議会の承認を得る必要があるため、財政政策の規模は縮小される可能性が高いだろう。加えて、政策による経済の押し上げ効果は、財政支出や減税規模ほどには大きくならないと見込まれる。


米国経済の先行きのリスクとしては、景気過熱や保護貿易によるインフレの高進や、財政悪化懸念による長期金利の上昇、ドル高などが考えられよう。金融政策に関して、インフレリスクが高まる中で、FRBは利上げペースを速める必要性が高まると見込まれる。一方で、今後明らかになるトランプ氏の政策や議会動向、市場動向を見極める必要があるため、2016年12月のFOMCで示された、2017年に3回の利上げ見通しは、利上げ回数の上限の目安と考えられよう。


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