サマリー
2016年11月の大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降、トランプ氏の政策に対する期待感は大きく高まっている。トランプ氏による減税や大型インフラ投資といった拡張的な財政政策は、2017年末頃から実行され始めるとみられ、米国の成長率を再加速させる要因となろう。ただし、トランプ氏による政策案は財政収支を大幅に悪化させることに加え、大型のインフラ投資については伝統的な共和党の考え方に反する政策である。政策が実行されるには議会の承認を得る必要があるため、財政政策の規模は縮小される可能性が高いだろう。加えて、政策による経済の押し上げ効果は、財政支出や減税規模ほどには大きくならないと見込まれる。
米国経済の先行きのリスクとしては、景気過熱や保護貿易によるインフレの高進や、財政悪化懸念による長期金利の上昇、ドル高などが考えられよう。金融政策に関して、インフレリスクが高まる中で、FRBは利上げペースを速める必要性が高まると見込まれる。一方で、今後明らかになるトランプ氏の政策や議会動向、市場動向を見極める必要があるため、2016年12月のFOMCで示された、2017年に3回の利上げ見通しは、利上げ回数の上限の目安と考えられよう。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 関税政策はマイルド化へ
トランプ大統領に対する世論と共和党内の不満の高まりが抑止力に
2025年11月25日
-
政府閉鎖前の雇用環境は緩やかな悪化が継続
2025年9月米雇用統計:雇用者数は増加に転じるも、回復は緩やか
2025年11月21日
-
統計公表停止中、米雇用環境に変化はあるか
足元は悪化基調が継続も、先行きは悪化一辺倒ではない
2025年11月14日
最新のレポート・コラム
-
他市場にも波及する?スタンダード市場改革
少数株主保護や上場の責務が問われると広範に影響する可能性も
2025年12月03日
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
「年収の壁」とされる課税最低限の引上げはどのように行うべきか
基礎控除の引上げよりも、給付付き税額控除が適切な方法
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
ビットコイン現物ETFとビットコイントレジャリー企業株式
2025年12月05日

