サマリー
◆3月のFOMC(連邦公開市場委員会)における政策変更はなく、利上げのペースは前回見通しからより緩やかなものへと引き下げられた。
◆声明文における現状認識として、米国経済の堅調さが強調される表現となった。経済の先行きは海外経済と金融動向が引き続きリスクであるとされたが、リスクは後退したことが暗に示された。インフレ動向の重要性がより一層高まっているとみられる。
◆労働需給のひっ迫により賃金上昇率は加速しつつあり、基調的なインフレ圧力は着実に高まってきた。夏場以降、エネルギーによるマイナス寄与は徐々に縮小していくとみられ、年後半にはインフレに対する議論が高まる可能性が高い。緩やかな利上げへの支持が強まるだろう。
◆足下、個人消費には減速感があるものの、就業者数が増加し、年初から下落していた株価が下げ止まりつつあることが、個人消費の増加をサポートするだろう。住宅市場では販売が減速する中、着工は緩やかな増加が続いている。企業活動も製造業に明るい兆しがある。米国経済は力強さを増しているわけではないが、堅調さを維持していると言えよう。
◆2015年10-12月期GDPの2次速報では、個人消費が下方修正されたものの、在庫投資、外需のマイナス寄与が縮小したことで、実質GDP成長率は上方修正された。10-12月期の改定に加えて、足下の小売売上高の減速もあり、個人消費の見通しを引き下げたが、米国経済は内需の増加を牽引役に緩やかな景気拡大が続くというシナリオに変更はない。
◆予備選、党員集会が集中する3月1日の「スーパー・チューズデー」などを経て、民主・共和両党の指名候補者は絞られてきた。同時に行われる連邦議会選挙の予備選も始まり、候補者選びが長引き、混迷する可能性が出てきた。政策不透明感がFRBの経済見通しや利上げペースも左右することになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+2.2万人
2025年8月米雇用統計:雇用環境の悪化が継続し、利下げが近づく
2025年09月08日
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日