米国経済見通し 内需堅調でインフレを注視

選挙戦が長引けば利上げ先送り要因に

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2016年03月22日

  • 土屋 貴裕
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆3月のFOMC(連邦公開市場委員会)における政策変更はなく、利上げのペースは前回見通しからより緩やかなものへと引き下げられた。


◆声明文における現状認識として、米国経済の堅調さが強調される表現となった。経済の先行きは海外経済と金融動向が引き続きリスクであるとされたが、リスクは後退したことが暗に示された。インフレ動向の重要性がより一層高まっているとみられる。


◆労働需給のひっ迫により賃金上昇率は加速しつつあり、基調的なインフレ圧力は着実に高まってきた。夏場以降、エネルギーによるマイナス寄与は徐々に縮小していくとみられ、年後半にはインフレに対する議論が高まる可能性が高い。緩やかな利上げへの支持が強まるだろう。


◆足下、個人消費には減速感があるものの、就業者数が増加し、年初から下落していた株価が下げ止まりつつあることが、個人消費の増加をサポートするだろう。住宅市場では販売が減速する中、着工は緩やかな増加が続いている。企業活動も製造業に明るい兆しがある。米国経済は力強さを増しているわけではないが、堅調さを維持していると言えよう。


◆2015年10-12月期GDPの2次速報では、個人消費が下方修正されたものの、在庫投資、外需のマイナス寄与が縮小したことで、実質GDP成長率は上方修正された。10-12月期の改定に加えて、足下の小売売上高の減速もあり、個人消費の見通しを引き下げたが、米国経済は内需の増加を牽引役に緩やかな景気拡大が続くというシナリオに変更はない。


◆予備選、党員集会が集中する3月1日の「スーパー・チューズデー」などを経て、民主・共和両党の指名候補者は絞られてきた。同時に行われる連邦議会選挙の予備選も始まり、候補者選びが長引き、混迷する可能性が出てきた。政策不透明感がFRBの経済見通しや利上げペースも左右することになろう。

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