米国経済見通し 株安はFRBのせいなのか

内需主導での拡大続くが、短期的には株価下落が下押しリスク

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2016年01月21日

  • 土屋 貴裕
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2016年の初めからの世界同時株安では、MMF規制改革と2015年12月に始まった利上げに伴うオペレーションが過剰流動性の巻き戻しのペースを加速させ、市場の混乱に拍車を掛けた可能性は指摘できる。


◆MMFからの資金流出が、リーマン・ショックを含む金融危機につながったと考えられる。足下でも急速な資金シフトが起き、MMFの資金をFRB(連邦準備制度理事会)が吸収したことで、資金繰りが悪化した投資主体が運用資産を減らさざるを得なくなったと考えられる。


◆次回の1月のFOMC(連邦公開市場委員会)は、利上げの影響を含む経済統計の発表が十分ではなく、2回目の利上げは見送られるだろう。声明文に次の利上げに向けたヒントが示されるかどうかがポイントとなる。


◆暖冬が小売販売の下押し要因となったが、個人消費を中心とした内需の拡大と、雇用者数増加の循環メカニズムが働いている。それはサービス部門において顕著であり、企業部門でも非製造業が底堅い一方で、製造業は停滞が続いている。住宅市場は特殊要因一巡後の回復が期待されるが、先行きはやや不透明である。


◆先行き、雇用・所得環境の改善を背景とした個人消費の増加を牽引役にして、内需主導の景気拡大が続くというシナリオに変更はない。短期的には、世界的な株価の下落が、実体経済を下押しする可能性には留意が必要である。株価下落による逆資産効果や、消費者、企業のマインド悪化で支出が抑制されるリスクがある。

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