サマリー
◆高水準を維持する求人率を業種別に見ると、とりわけ足下で好調なのは専門・企業向けサービス、小売、教育・医療、レジャー・娯楽などのサービス業であり、製造業や建設業などでは過去に比べて目立って求人が増加しているわけではない。
◆サービス業を中心とした高水準の求人によって、雇用の伸びは当面維持されるとみられる。ただし、専門・企業向けサービスでは、労働供給不足が顕在化しつつあり、雇用の伸びが抑制される可能性がある。
◆専門・企業向けサービスは労働時間が過去に比べて長く、労働時間延長の余地が小さい。また、パートタイム比率の高い小売、レジャー・娯楽ではオバマケアによる保険料負担を避けるため労働時間の延長に対して慎重な姿勢が続くとみられる。労働需給がひっ迫する中でも、労働時間の延長は限定的となるだろう。
◆業種別に見た労働需給と賃金の間には明確な関係性は見られず、労働需給がひっ迫した業種の賃金が上がりやすいとは限らない。むしろ、労働需給がひっ迫する業種においては労働生産性が低下しやすく、賃金上昇が抑制される可能性もあろう。また、相対的に労働生産性、賃金水準が低い、個人消費関連サービス業で特に雇用者数が増加するとみられ、経済全体の平均賃金は上昇しづらい状況が続く公算である。
◆賃金が伸び悩む中でも、個人消費関連サービス業を中心とした雇用者数の拡大によって、雇用者所得は堅調に推移するとみられる。所得と個人消費の循環的な増加が今後も続くことで、米国経済は底堅い成長が続くだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日