米国経済見通し 下押しリスクは軽減?

金融政策が稼ぐひとときの安定期

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2012年09月20日

  • 土屋 貴裕
  • 笠原 滝平

サマリー

◆非農業雇用者数の増加ペースは、失業率を低下させるほど良くもなければ、上昇させるほど悪くもない。このような状況のもとで、FedはMBS(住宅ローン担保証券)を買い入れるQE3(量的緩和策第3弾)に踏み切った。マーケットの期待に応え、住宅市場の後押しが期待される。また、買い入れ額の期間と総額を定めず、今後の追加緩和への期待感も残すことに成功した。だが、Fedでは「財政の崖」(Fiscal Cliff)にも、欧州の財政問題にも対応できないことは自明であろう。

◆財政問題などの先行き不透明感を背景とした企業マインドの悪化は、実際に企業活動の鈍化へと波及し始めた可能性がある。業種別動向などでは、自動車関連部門の浮沈などに留意すべきだろう。先行きに楽観的な見方もあるが、販売価格の上昇期待は企業部門にインフレ圧力が滞留し始めた可能性を示唆する。

◆個人消費は底堅いが、株高などに支えられている側面を踏まえると、雇用・所得環境の改善がなければ、持続的な回復に至ることは容易ではないだろう。改善が続く住宅市場は明るい材料である。QE3によって銀行の貸出態度が改善すれば、資金需要が明確な住宅ローンの利用可能性が高まり、住宅市場はさらに改善することとなるだろう。

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