米国経済見通し 持ち直しの兆候と残された時間

想定以上に底堅いが先行きのマインドが懸念材料

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2012年08月23日

  • 土屋 貴裕
  • 笠原 滝平

サマリー

◆構造的なリスクとしては、引き続き2012年末から2013年初にかけて、ブッシュ減税の期限切れと大幅な歳出削減が同時に起こる、いわゆる“財政の崖”(Fiscal Cliff)と、外部要因としての欧州財政問題が挙げられる。リスクバランスとしては、経済が下向きになる方向性に警戒を要すべき点も変わらないだろう。

◆先行きの消費者センチメントは悪化しているものの、雇用環境や個人消費の減速に歯止めがかかった様子がみられる。住宅市場の底堅さと家計のバランスシート調整の進展が、持ち直しの兆しをもたらしたと考えられる。ひとまずポジティブに評価できよう。企業でも悪化したマインドは改善をみせていないが、実際の企業活動はそれほど鈍化しているわけではない。

◆消費者や企業のマインド悪化は、財政問題等の先行き不透明感が背景の一つとなろう。政治が解決すべき問題であるが、年末年始までに解決に向けた進展がみられなければ、実際の企業活動の鈍化と、労働市場へのさらなる悪影響の波及が想定されるだろう。持ち直しの兆候が、兆しのまま留まってしまうことになる。経済の下押し要因がマインド面を通じてさらなる経済の下ぶれにつながる可能性があると言えよう。

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