米経済見通し 2年前から自明だった“財政の崖”の問題

緩慢な成長が続く

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2012年07月20日

サマリー

◆米国経済の回復ペースの鈍化傾向が強まっている。暖冬などの特殊要因によって一時的に押し上げられていた部分が剥落し実態が分かりにくくなっていたが、特殊要因の剥落分を除いたとしても、景気は下ブレの可能性が高まっていると考えられよう。構造的なリスクとしては、2012年末から2013年初にかけて、ブッシュ減税の期限切れと大幅な歳出削減が同時に起こる、いわゆる“財政の崖”(Fiscal Cliff)と、外部要因としての欧州の財政問題が挙げられる。GDP成長率のコンセンサス予想は、さらに慎重になっており、“財政の崖”への警戒感が年後半の成長率を抑制することが懸念材料として挙げられている。

◆足もとは、雇用環境の改善ペースがさらに緩慢なものとなってきたことから個人消費は減速しているが、さらに財政問題等の先行き不透明感から消費者のセンチメントは悪化している。住宅価格下落の影響が軽微で、資金調達が可能な主体にとっては、住宅を購入する絶好の機会であり、住宅市場の改善が続いている。企業でも製造業を中心にマインドの悪化が明確だが、実際の企業活動はそれほど鈍化しているわけではない。だが、構造問題によって企業活動が鈍ると、改善ペースが鈍っている労働市場にも影を落とすことが想定されるだろう。“財政の崖”に対し、マーケットが議会の対応にネガティブな反応をみせると、市場の混乱がさらなるマインドの悪化等を通じて、実体経済の下押し圧力に転じる可能性が考えられる。

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