米国の雇用環境の改善は引き続き緩慢

6月の雇用統計:先行き不透明な状況が続く見込み

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2012年07月09日

  • 笠原 滝平

サマリー

◆6月の非農業雇用者数は前月差8.0万人増となり、市場予想を下回り、3ヶ月連続で一ケタ台の低い増加幅にとどまったため悪い内容であったと言えるだろう。雇用者数は、2011年12月から2月にかけて平均で約25万人のペースで増えてきたものの、3月から減速し、ここ3ヶ月間で勢いが半分以下になった格好である。政府部門は0.4万人減となり、引き続き労働市場の足を引っ張っている。そのうえ、注目される民間部門の雇用者数も8.4万人増と市場予想を下回り、2011年8月以来、10ヶ月ぶりの低水準となった。

◆6月の失業率は8.2%と横ばいであったが、より細かくみると8.22%になり5月の8.21%から0.01%ポイント上昇した(市場予想は前月と変わらない8.2%)。失業者数は2.9万人増と2ヶ月連続の増加となった。失業率は2月以来の高水準となったが、上昇の主因は移民などによる16歳以上人口の増加である。4月に1981年以来の低さとなった労働参加率は63.8%と前月から変わらず、非労働力人口は前月から3.4万人増加して、僅かながら失業率を押し下げている。さらに、家計調査ベースでは就業者数が12.8万人増加しており、失業率を0.1%ポイント押し下げている。したがって、就業者数は増加したもののこの程度の増加幅では、一定のペースで16歳以上人口が増加し続ける米国においては失業率を押し下げることができない。事業所調査の雇用者数の増加とあわせても、足下の雇用改善ペースでは物足りない内容だ。

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