サマリー
イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃をはじめとして、中東地域で新たな紛争が起こっている。そして、きわめて残念なことに当事者双方の損害は拡大し続けており、他のイスラム組織との衝突も含めてさらなる紛争の拡大が懸念されるなど、事態の不透明感は増している。様々な要因から世界が景気減速懸念に身構えている状況下に、また一つ悩ましい問題が加わったといえる。当面の世界経済への影響に関しては、以下の2点に注目している。
一つは、事態が長期化する懸念である。パレスチナ問題に関しては、米国政府のスタンスがイスラエル支持ではっきりしていることがポイントとなる。米国が紛争の一方に肩入れすることは、世界の分断の新たな材料になってしまう可能性が高い。米中対立を軸とした「民主主義国」と「権威主義国」との分断や、先進国と発展途上国、あるいは各宗派間の対立など、様々な要素が絡んで事態が複雑化・細分化することは、問題の解決を遅らせるだろう。もちろんテロ行為は許されないものだが、“テロ”とのレッテルを貼って相手を拒絶するような姿勢は、昨年来のウクライナ問題でも見られるように、双方の歩み寄りもなく事態が長期化する要因となり得る。
もう一つは、インフレ再加速の懸念である。中東での紛争が拡大すれば、周辺に位置しており、世界の物流のチョークポイント(戦略的に重要な場所)でもあるスエズ運河やホルムズ海峡の航行に支障をきたす恐れが指摘される。中東が主要な産出地であり、直接影響し得る原油価格のみならず食糧や素材も含めて、物流の停滞が幅広い商品価格の高騰を招きかねない。既に、海運市況で代表的なバルチック海運指数は今年の高値を更新してきた。今後影響が広がる場合、主要国ではようやく落ち着き始めたインフレが再加速し、消費の阻害要因となる恐れに注意が必要となる。そして、インフレは世界経済の注目点である各国の金融政策の行方にも大きな影響を及ぼすだろう。米国と欧州では利上げの打ち止めムードが高まりつつあるが、インフレが再加速する場合、引き締め的な金融政策が長引くことや、再度の利上げのリスクも指摘される。一方で金融緩和が続く日本や中国でも、緩和策の継続がより困難になることが考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
米国経済見通し 長期金利上昇×金融引き締め長期化の帰結は?
金融システムへの負荷を増やし、景気の調整幅を大きくする可能性
2023年10月20日
-
欧州経済見通し 続く景況感の悪化
消費者マインド改善の再加速が欧州経済持ち直しのカギ
2023年10月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2026年2月号(No.471)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2026年01月23日
-
日本経済見通し:2026年1月
2026~35年度における経済財政・金利・為替レートの中期見通し
2026年01月23日
-
世界経済の中期見通し
2026年01月22日
最新のレポート・コラム
-
2025年10-12月期GDP(1次速報)
民需の増加で2四半期ぶりのプラス成長となるも輸出の減少が続く
2026年02月16日
-
議決権行使は過度に重視されている:英IA
議決権行使の重要性を強調するあまり形式的対応を招いている
2026年02月16日
-
会社法改正の検討事項:従業員等に対する株式付与手続きはどのように見直されるか
従業員への株式報酬は、株主総会普通決議が要件となる可能性も
2026年02月16日
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.0万人
2026年1月米雇用統計:雇用者数は業種別で強弱がある
2026年02月12日
-
総選挙後に議論の加速が期待されるCGコード改訂
2026年02月16日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
2026年度税制改正大綱解説
給付付き税額控除導入を含めた所得税の抜本的改革が必要
2025年12月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
「飲食料品の消費税ゼロ」の経済効果
世帯あたり年8.8万円の負担軽減になり個人消費を0.5兆円押し上げ
2026年01月20日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
2026年度税制改正大綱解説
給付付き税額控除導入を含めた所得税の抜本的改革が必要
2025年12月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
「飲食料品の消費税ゼロ」の経済効果
世帯あたり年8.8万円の負担軽減になり個人消費を0.5兆円押し上げ
2026年01月20日

