日本経済見通し:2022年7月

感染再拡大を踏まえGDP見通しを改訂/電力需給対策の効果は?

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2022年07月20日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉
  • 経済調査部 エコノミスト 岸川 和馬

サマリー

◆直近の公表データを基に推計すると、2022年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.4%と2四半期ぶりのプラス成長となったとみている。7-9月期は新型コロナウイルスの感染状況に大きく左右されるが、メインシナリオでは行動制限が回避されるとの想定の下、サービス消費の回復が継続することもあって同+6.8%と高めのプラス成長を見込んでいる。一方、行動制限に中国での広範囲かつ長期的なロックダウンが加わるリスクシナリオでは、7-9月期の実質GDP成長率は同+0.8%程度まで低下する可能性がある。

◆政府は今冬に最大9基の原子力発電所(以下、原発)の稼働を目指している。これに伴って石炭火力発電の稼働が抑えられれば、石炭輸入額の減少を通じて名目GDPを直接的に0.4兆円程度押し上げ、家計の電気料金を1世帯あたり2,000円/年程度引き下げる。発電量の増分は「サハリン2」由来の天然ガスで賄われている発電量に匹敵する。ウクライナ危機が長期化する中、安全性を確保した原発を可能な限り稼働させる重要性は高まっており、2023年以降も官民を挙げて電力供給体制の強化に取り組むべきだ。

◆電力需給逼迫の緩和と実質的な電気代負担の軽減の両方に対応するための「節電プログラム」が導入される。これは、プログラムへの登録や節電を行った家庭や企業を対象に、政府がポイントを付与する仕組みだ。登録した家庭には2,000円分相当のポイントが一律に付与される。プログラムで気になるのが、節電の取り組みをどう評価するかだ。節電行動の実態を十分に反映しない形でポイントが付与される可能性があるため、民間事業者の先行事例を活かしつつ、評価方法について多面的に検討する必要がある。

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