サマリー
◆2022年における日本の実質GDP成長率は+4.0%と、欧米並みの高成長を見込んでいる。経済活動の再開や、岸田文雄政権が取りまとめた経済対策の効果もあって個人消費や設備投資の成長率が高まる一方、政府消費はコロナ危機対応策の必要性が低下することで伸び悩む見通しである。
◆ただし、景気の下振れリスクは小さくない。最大のリスク要因は新型コロナウイルスの変異株である。仮にオミクロン株が国内で流行し、感染予防率が30%pt低下すると、2022年に3回の行動制限の強化を余儀なくされる。同年の実質GDPは全国ベースで10兆円減少し、成長率は1.8%pt低下するだろう。また新たな変異株が出現する可能性もあり、とりわけ重症化予防効果を引き下げるタイプのものには警戒が必要だ。
◆米国ではインフレ懸念が強まっているが、足元で前年比+7%近いCPI上昇率は2022年10-12月期で同+3.0%まで低下する見込みである。だが、インフレが想定以上に加速し、米国国債市場が変調をきたす可能性は否定できない。仮に米国の長期金利が5%まで上昇すると、世界経済の成長率は5%pt低下する。世界経済への悪影響が2022年中に全て発現すれば、同年の世界経済はマイナス成長に陥るほどのインパクトがある。
◆中国の不動産市場は停滞感が強まっている。民間部門の債務残高対GDP比は、バブル崩壊を経験した日本、米国、スペインのピーク時を超えている。政府の政策余地の大きさもあり、当面のバブル崩壊リスクは限定的とみているものの、その動向には注意が必要だ。上記3カ国のバブル崩壊後の価格推移を機械的に中国に当てはめると、不動産価値の減少額は最大280兆元(可処分所得の4倍程度)に上る。中国でリスクが顕在化した場合、負の資産効果を通じて個人消費が大幅に抑制されることは避けられないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年8月号(No.465)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年07月23日
-
回復感なき経済成長は続くのか
2025年07月23日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日