サマリー
- 堅調な景気拡大が続くが、成長速度は17年度にピークアウト:2017年7-9月期GDP一次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2017年度が前年度比+1.6%(前回:同+1.7%)、2018年度が同+1.2%(同:同+1.3%)、2019年度が同+0.6%である。日本経済は、①堅調な外需、②在庫投資、③耐久財の買い替え需要に支えられ、成長の加速を続けてきた。しかし、これら三つの要因が剥落することに加え、2019年10月に予定されている消費増税に伴う負の所得効果が見込まれる中、先行きの日本経済は2019年度にかけて減速を続ける見通しだ。
- 論点①:アベノミクスの経済効果と2019年の消費増税の影響度は?:これまでのアベノミクスが企業収益および日本経済に与えた効果に加え、2019年10月に予定されている消費増税の影響について検証した。シミュレーションに基づくと、大胆な金融緩和(①実質金利低下+②円安・株価上昇)の効果により、実質GDPは年率+0.45%程度押し上げられ、失業率は年平均で▲0.1%pt程度押し下げられたと試算される。また、2019年の消費増税は、実質個人消費を消費増税がない場合に比べて、2018年度に+0.3兆円(+0.1%)押し上げ、2019年度に▲0.2兆円(▲0.1%)押し下げ、2020年度に▲3.1兆円(▲1.0%)押し下げる(駆け込み+反動減+短期の所得効果)見込みだ。
- 論点②:残業規制による労働力不足をどう補うか?:残業規制による労働力不足を補うための方法として、「既存労働者」と「新規労働者」という二つの観点から、労働供給の伸びしろを定量的に分析した。短期的には、既存労働者の労働時間増加等が期待されるものの、「建設業」や「情報通信業」等における労働供給の伸びしろは限定的である。このため、失業率の低下等による新規労働者の増加に加えて、企業と政府の双方において労働生産性上昇のための取り組みを進めることが不可欠だ。
- 論点③:地域間所得格差はどうすれば縮小するのか?:全国的に地域間所得格差は縮小するが、地域によりばらつきも見られる。高付加価値産業に特化する地域や移出・輸出が多い地域で所得格差が縮小する傾向がある。地域の得意分野で移出や輸出を伸ばす一方、関連産業のすそ野を広げるなど移入・輸入が多くなりすぎないことが必要である。地域の労働生産性の格差は同一産業内の労働生産性格差にも多く起因し、その縮小や高付加価値産業への雇用シフトも地域間格差を減らすには重要だ。
- 論点④:中国は資産価格の下落にどれだけ耐えられるか?:企業部門を中心に、中国の債務残高が大幅に増加しており、世界的に金融危機を招くリスク要因と懸念されている。一方、中国は、消費主導の成長へと転換を図っており、今後は家計部門の動向がカギとなる。我々の試算によれば、仮に株式や不動産等の資産価格が3割近く下落すると、日本のバブル崩壊や米国のリーマン・ショック並みに家計の純資産は悪化してしまう。現在、家計の健全性は保たれており、短期的なリスクは小さいが、資産価格の変化を注視していくべきだ。
- 日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、①トランプ大統領の政策、に加えて、②中国経済の下振れ、③米国の「出口戦略」に伴う新興国市場の動揺、④地政学的リスクおよび政治リスクを背景とする「リスクオフ」、などの点に留意が必要である。
- 日銀の政策:日銀は、現在の金融政策を当面維持する見通しである。2016年9月に導入した新たな金融政策の枠組みの下、デフレとの長期戦を見据えて、インフレ目標の柔軟化などが課題となろう。
【主な前提条件】
(1)公共投資は17年度+4.4%、18年度▲1.5%、19年度▲1.2%と想定。
(2)為替レートは17年度112.3円/㌦、18年度113.5円/㌦、19年度113.5円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は17年+2.2%、18年+2.4%、19年+2.1%とした。
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