日本経済見通し:7年10ヶ月ぶりの円安が日本経済に与える影響は?

「FED vs. ECB」の軍配はどちらに?

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2015年05月27日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 小林 俊介
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎
  • 永井 寛之

サマリー

7年10ヶ月振りの円安が日本経済に与える影響は?:為替市場で円安が加速している。5月26日の外国為替市場において、円相場は対ドルで7年10ヶ月ぶりの安値をつけた。本稿では、最初に大和総研のマクロモデルを用いて、「円安はわが国のマクロ経済にとってプラスであるが、格差拡大をもたらす」ことを指摘したい。


日本経済のメインシナリオ:2015年1-3月期GDP一次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2015年度が前年度比+1.7%(前回:同+1.9%)、2016年度が同+1.8%(同:同+1.8%)である。今後の日本経済は、①アベノミクスによる好循環が継続すること、②米国向けを中心に輸出が徐々に持ち直すことなどから、緩やかな回復軌道をたどる見通しである。


3つの論点:今回の経済見通し改訂に際しては、①日米欧3極の中央銀行の非伝統的金融政策の効果、②「FED vs. ECB」の軍配はどちらに?、③企業の利益分配から見た賃金・設備投資の先行き、という3つの論点を検証した(→詳細は、熊谷亮丸他「第185回 日本経済予測」(2015年5月27日)参照)。本稿では、これらの3つの論点の中で「②『FED vs. ECB』の軍配はどちらに?」について解説したい。


「FED vs. ECB」の軍配はどちらに?:米国の利上げに伴う世界経済への悪影響が懸念されている。一方でECBの量的緩和による世界経済に対する下支え効果に期待がかかるが、当社のマクロモデルによる試算結果によれば、世界経済および日本経済に与える影響はECBよりもFEDの方が大きくなる見込みだ。ただしFEDがあくまで米国の景気に中立的なペースで利上げを行う限り、過度の懸念は禁物である。新興国のバランスシート改善に伴い、通貨危機のリスクも低減している。

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