サマリー
- 日本経済のメインシナリオ:2014年1-3月期GDP一次速報を受け、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2014年度が前年度比+1.0%(前回:同+1.0%)、2015年度が同+1.5%(同:同+1.5%)である。今後の日本経済は、2014年4-6月期には消費税増税の影響で一時的に低迷するものの、7-9月期以降回復軌道を辿る見通しである。①消費税増税による悪影響が限定的とみられること、②米国向けを中心に輸出が緩やかに持ち直すことなどが、日本経済の好材料となろう。
- 4つの論点:本予測では、以下の4つの論点を検証した。
論点①:消費税増税の影響:今回の消費税増税の影響は限定的とみられる。消費税増税は、2014年度の実質GDP成長率を▲0.88%pt押し下げ、2015年度のGDP成長率を+0.26%pt押し上げる見込みである。
論点②:賃上げ・物価動向の展望:現状わが国では、景気回復によってマクロ的な労働需要が高まるなか、大企業を中心にベースアップの動きが広がっている。主に一般労働者を対象とした賃上げであるが、こうした動きは物価の押し上げに寄与するとみられる。また、パートタイム労働者の賃金についても一般労働者の賃金上昇、物価上昇に遅れてさらに上昇する可能性が高い。
論点③:設備投資の動向:足下の様々なデータを検証すると、設備投資には底入れの兆しが見られる。ただし、設備投資が力強い増加に転ずるには、「第三の矢(成長戦略)」の強化などを通じた期待成長率の上昇がカギとなる。
論点④:米国の出口戦略が世界経済に与える影響:米国の出口戦略が世界経済に与える影響に関する定量的なシミュレーションを行うと、FRBが実体経済の回復に見合ったペースで慎重な出口戦略を講じる場合、世界経済は着実な回復軌道を辿るとみられる。 - 「アベノミクス」の課題:「アベノミクス」が抱える最大の課題が、①財政規律の維持、②成長戦略の強化、である点を、当社は折に触れて主張してきた。そのことを踏まえたうえで、本予測では各論として以下の2つのテーマにスポットを当てた。
課題①:「貯蓄から投資へ」という潮流を加速:今後「アベノミクス」の効果でインフレが進行するとみられるなか、わが国は「貯蓄から投資へ」という潮流を加速する必要がある。
課題②:少子化に歯止めをかける:わが国が長年悩まされてきた少子化に歯止めをかけるためには、女性の活用を積極化することなどがポイントとなる。 - 日本経済が抱える4つのリスク要因:日本経済のリスク要因としては、①新興国市場の動揺、②中国の「シャドーバンキング」問題、③「欧州ソブリン危機」の再燃、④地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、の4点に留意が必要である。
- 日銀の金融政策:日銀による追加的な金融緩和は2015年1-3月期以降にずれ込む見通しである。日銀の物価目標達成の可能性は排除できないものの、当社の現時点におけるメインシナリオでは、消費者物価上昇率は2%には届かないとみている。
【主な前提条件】
(1)公共投資は14年度▲2.3%、15年度▲10.3%と想定。15年10月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは14年度100.5円/㌦、15年度100.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は14年+2.3%、15年+3.0%とした。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国:金融緩和など景気刺激策を発表も効果は?
人民銀行総裁が預金準備率の引き下げ、住宅市場テコ入れ策を「予告」
2024年09月26日
-
石破新政権誕生、経済政策の注目点は?
デフレ脱却後も見据えた供給面重視の経済・財政運営に期待
2024年10月03日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
中国経済見通し:なりふり構わぬテコ入れ策発動
金融緩和、住宅市場テコ入れ策、株価対策、国債増発
2024年10月22日
中国:金融緩和など景気刺激策を発表も効果は?
人民銀行総裁が預金準備率の引き下げ、住宅市場テコ入れ策を「予告」
2024年09月26日
石破新政権誕生、経済政策の注目点は?
デフレ脱却後も見据えた供給面重視の経済・財政運営に期待
2024年10月03日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
中国経済見通し:なりふり構わぬテコ入れ策発動
金融緩和、住宅市場テコ入れ策、株価対策、国債増発
2024年10月22日