サマリー
◆経済見通しを改訂:2013年10-12月期GDP一次速報を受け、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2013年度が前年度比+2.3%(前回:同+2.5%)、2014年度が同+1.0%(同:同+1.0%)、今回新たに予測した2015年度が同+1.5%である。今後の日本経済は、①米国経済回復による輸出の持ち直し、②日銀の金融緩和を受けた円安・株高の進行、③消費税増税に伴う経済対策の効果などから、拡大が続く見通しだ。
◆日本経済に関する4つの論点:今回の経済見通し改訂に際しては、①賃上げ、②日銀の物価目標、③経常赤字、④格差問題、という日本経済に関する4つの論点を検証した(→詳細は、熊谷亮丸他「第180回 日本経済予測」(2014年2月21日)参照)。本稿では、これらの4つの論点の中で「賃上げ」と「経常赤字」について検証したい。
◆論点①:春闘で賃金は上がるのか?:今後、わが国では、政府が目指す「賃上げによる経済の好循環」が起きるのだろうか?第一に、実質賃金の国際比較を行うと、日本で賃金が低迷しているのは、労働分配率が低いためではなく、労働生産性や企業の競争力などに問題があることが確認できる。第二に、「賃上げ」には一定の「呼び水効果」が期待される。特に、定期給与の増加は耐久財を中心に個人消費を活性化させるため、「合成の誤謬」を回避する目的で、余裕のある企業は極力前倒しでベースアップに取り組むことが望ましい。第三に、今後の賃金動向に関するシミュレーションを行うと、景気の循環的な回復を背景に、賃金は緩やかに上昇する見通しである。
◆論点②:経常赤字は定着するか?:日本の経常収支は循環的に回復し、当面経常赤字が定着する事態は回避されるだろう。第一に、当社の試算によれば、2013年の貿易収支は、空洞化の進展により約7兆円、原発の停止によって約4兆円悪化している。しかしながら、第二に、米国に主導された世界経済の回復や円安の進行などを背景に、貿易収支の赤字幅は循環的に見て最悪期を脱するとみられる。わが国の輸出が伸び悩んでいる主因は海外経済の低迷であり、「Jカーブ効果」が消滅したとの判断は時期尚早である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
主要国経済Outlook 2025年9月号(No.466)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年08月25日
-
マーケットは堅調も、米国経済の不透明感は増す
2025年08月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日