第180回日本経済予測

日本経済に関する4つの論点を検証する~①賃上げ、②日銀の物価目標、③経常赤字、④格差問題~

RSS

2014年02月21日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
  • 齋藤 勉
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎
  • 田中 豪

サマリー

  1. 日本経済のメインシナリオ:2013年10-12月期GDP一次速報を受け、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2013年度が前年度比+2.3%(前回:同+2.5%)、2014年度が同+1.0%(同:同+1.0%)、今回新たに予測した2015年度が同+1.5%である。今後の日本経済は、①米国経済回復による輸出の持ち直し、②日銀の金融緩和を受けた円安・株高の進行、③消費税増税に伴う経済対策の効果などから、拡大が続く見通しだ。
  2. 日本経済に関する4つの論点:本レポートでは、①賃上げ、②日銀の物価目標、③経常赤字、④格差問題、という、日本経済に関する4つの論点を検証した。
  3. 論点①:賃上げ:今後、わが国では、政府が目指す「賃上げによる経済の好循環」が起きるのだろうか?第一に、実質賃金の国際比較を行うと、日本で賃金が低迷しているのは、労働分配率が低いためではなく、労働生産性や企業の競争力などに問題があることが確認できる。すなわち、わが国では実質賃金上昇に向けて、「第三の矢(成長戦略)」の強化を通じた、労働生産性の向上や企業の競争力改善などがカギとなる。第二に、「賃上げ」には一定の「呼び水効果」が期待される。特に、定期給与の増加は耐久財を中心に個人消費を活性化させるため、「合成の誤謬」を回避する目的で、余裕のある企業は極力前倒しでベースアップに取り組むことが望ましい。第三に、今後の賃金動向に関するシミュレーションを行うと、景気の循環的な回復を背景に、賃金は緩やかに上昇する見通しである。
  4. 論点②:日銀の物価目標:日銀が掲げる「物価上昇率2%」目標実現の可能性は、黒田総裁就任当初と比べて徐々に高まりつつある。ただし、為替、賃金、期待インフレ率などの動向次第では、日銀の物価目標達成の可能性は排除できないものの、当社の現時点におけるメインシナリオでは、消費者物価上昇率は2%には届かないとみている。なお、日銀による追加的な金融緩和は2014年7-9月期以降にずれ込む見通しである。
  5. 論点③:経常赤字:わが国の経常収支は循環的に回復し、当面経常赤字が定着する事態は回避されるだろう。第一に、当社の試算によれば、2013年の貿易収支は、空洞化の進展により約7兆円、原発の停止によって約4兆円悪化している。こうした構造変化を勘案すると、わが国の経常収支がかつての10兆円超の大幅な黒字水準を回復することは見込み難い。しかしながら、第二に、米国に主導された世界経済の回復や円安の進行などを背景に、貿易収支の赤字幅は循環的に見て最悪期を脱するとみられる。わが国の輸出が伸び悩んでいる主因は海外経済の低迷であり、「Jカーブ効果」が消滅したとの判断は時期尚早である。
  6. 論点④:格差問題:現状わが国では景気拡大の裾野が広がり、循環的に格差が縮小する兆しが見られる。今回の景気回復は公共投資などの内需が主導する色彩が強いことも、格差拡大を防ぐ一因となっている。今後は、日本政府が内需の好循環を強化することなどを通じて、格差の拡大を防ぐ必要があるだろう。
  7. 日本経済が抱える4つのリスク要因:日本経済のリスク要因としては、①新興国市場の動揺、②中国の「シャドーバンキング」問題、③「欧州ソブリン危機」の再燃、④地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、の4点に留意が必要である。

【主な前提条件】
(1)公共投資は13年度+18.1%、14年度▲3.0%、15年度▲10.3%と想定。14年4月、15年10月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは13年度100.0円/㌦、14年度100.0円/㌦、15年度100.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は14年+2.7%、15年+3.1%とした。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。