「一度出せば足りる」統計へ

公的統計のデジタル化を問う②-負担軽減の「実装」

RSS

サマリー

◆前編で示した公的統計のデジタル化による負担軽減の効果を安定的に得るには、「制度・法」「標準化」「府省の縦割り」「民間データの代表性・継続性」「品質保証」「コストとメリット還元」「機密・信頼」「人材・予算」という課題を、効果の段階(電子化→削減→代替)に応じて計画的に手当てする必要がある。

◆これらの課題の背景には、各府省が所管分野の統計を作る分散型統計機構の下で、標準化、データ連携、重複報告の解消を府省横断で進めることの難しさがある。現行の第IV期の公的統計基本計画(以下、基本計画)が終了する2027年度を見据え、次期の第V期基本計画に向けては、統計委員会や総務省の調整機能、各府省の実施体制を含むガバナンス改革が問われる。

◆「機密・信頼」という主要な懸念は、制度だけでなく技術によっても軽減できる。秘密計算・差分プライバシー・合成データ等のプライバシー強化技術(PETs)については、国連が公的統計向けのガイドを整備し、各国統計機関で実証や導入検討が進められている。民間データの継続性リスクに対しては、提供のインセンティブ設計に加え、データアクセスや相互運用性のルールを定める欧州データ法・データスペース等の枠組みも参考となる。ただし、欧州データ法に基づく公的機関の民間データ取得は、例外的な必要性がある場合等に限定される。

◆第V期基本計画には、①once-only原則の明文化、②行政記録・民間データ利活用の制度整備、③府省共通の報告基盤、④企業へのメリット還元、⑤ガバナンス・人材・予算を柱に据え、費用便益と工程表を伴って位置づけるべきである。企業の報告者負担の軽減を、公的統計の持続可能性確保の中核に据える好機である。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート

同じカテゴリの最新レポート