音声生成AIが生み出す“声”の新たな価値

AIによって生成された自分の声の権利をどのように守るべきか

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2025年12月17日

サマリー

◆音声生成AIとは、テキストや既存の音声データをもとに、人間らしい自然な音声を生成する技術の総称である。近年の技術進化により、自然なイントネーションや抑揚、感情表現を伴う高品質な音声生成が可能となった。さらに、音声認識や言語生成といった関連AI技術も進化したことで、音声生成AI自体の活用領域も広がり、社会やビジネスの現場で新たな価値を生み出しつつある。

◆一方で、音声生成AIの普及により、声の無断利用やフェイク音声を悪用した詐欺・なりすましなど、新たな権利侵害が顕在化している。日本の現行法制度では、「声の権利」を明示的に保護する法律は存在しない。こうした状況を受け、制度整備に向けた検討が進められているが、制度だけでは悪用や権利侵害を完全に防ぐには不十分だ。AI技術の進化により生成音声の識別は困難になってきており、識別技術や透明性確保のための新たな対策が求められている。

◆この識別技術や透明性確保について、現時点では音声生成AI関連事業者による自主的な取り組みが先行している。音声生成AIサービスを提供する企業では、声の権利保護と対価還元を目的としたライセンスモデルが広がりつつあり、認証制度やガイドラインの導入、収益分配の仕組みなど、権利保護と利活用の両立を目指す動きが国内外で進展している。こうした業界主導の取り組みは、今後の制度整備や国際的なルール形成を後押しする役割も期待される。

◆音声生成AIは今後も技術進化とともに活用領域を広げ、アニメや吹き替え、教育、アクセシビリティなど多様な分野で新たな価値を生み出す可能性を持つ。一方で、声の無断利用などの権利侵害への対応は不可欠となっており、制度整備や国際的なガイドラインとの整合性が求められる。技術進化と権利保護のバランスを確保しながら、官民が連携して透明性と信頼性を担保することが、持続的なイノベーションと国際競争力強化の鍵となる。

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