サマリー
◆生成AIの進化により、情報取得・発信のあり方に大きな変化が生じている。2025年9月に、Googleが日本語対応のAI検索機能「AIモード」の提供を開始し、日本でもAI検索の導入が本格化してきた。AI検索は、膨大な情報をAIが解析・要約し、直接的な回答や要点を提示する新たな検索スタイルを提供する。こうした動きは、ユーザーの情報探索行動に影響を与え、情報発信者の権利保護や収益モデルに新たな課題を生じさせている。
◆AI検索による情報の要約・再利用は、著作権や法制度に関する新たな課題を顕在化させている。米国では早くから、AI検索サービスに対するメディア企業の著作権訴訟が相次いでいたが、今年に入り日本でも主要新聞社が同様の提訴に踏み切った。情報発信者の権利保護や収益確保が争点となっている。AI検索サービスは国境を越えて利用されるため、国際的な制度整備の必要性が高まっている。
◆情報発信者とAI検索サービスを運営する企業の間では、新たな収益分配モデルの模索も始まっている。例えば、発信した記事をAIの学習や要約生成に利用するにあたり、対価を支払う契約を結ぶ事例が見られる。また、AI検索においてAIに自社の情報を選定してもらうことを重要視する「GEO(生成エンジン最適化)」という概念が注目されはじめており、情報設計や発信戦略の転換が求められている。
◆AI検索の進化は、ユーザーの情報取得だけでなく、企業による情報発信のあり方に根本的な変化をもたらしている。今後は収益モデルの多様化や、情報の公共性・信頼性担保に向けた取り組みが重要となるほか、発信の目的やターゲット、媒体の特性に応じた情報設計が重要となる。情報発信が誰でもできる時代だからこそ、企業は目的意識を明確にし、社会的責任を果たしながら持続可能な情報流通のあり方を模索する姿勢が求められるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
-
2025年9月貿易統計
トランプ関税の悪影響続くも、円安効果で輸出金額は5カ月ぶり増加
2025年10月22日
-
2025年8月機械受注
非製造業(船電除く)を中心に弱含み、政府は基調判断を下方修正
2025年10月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日


