サマリー
◆家計支援策に関する国内の先行研究を見ると、限界消費性向(所得が増えたときに、そのうちどれくらいの割合が消費に回るか)は現金給付、所得減税、クーポンで明確な違いは見られず、0.1~0.3程度と推計したものが多い。また、限界消費性向を時系列で推計すると、コロナ禍以降に低下した可能性がある。
◆そのため限界消費性向を0.1~0.2と低めに想定すると、1人あたり3万円を全国民に一律で給付する場合のGDP押し上げ効果は0.3~0.5兆円程度と試算される。3.6兆円という巨額の財政支出を行っても消費喚起効果は極めて小さい。生活の下支えが目的であれば、対象を生活困窮者に絞るべきだ。所得減税では納税額がゼロまたは少額の人への支援が難しいため、現金給付の方が簡素で望ましいといえる。
◆飲食料品の消費税率をゼロにした場合の減税額は、1人あたり3万円の一律給付の所要額に相当する。両者はともに高所得世帯ほど恩恵が大きい。年収上位20%(2024年で年収768万円以上)の世帯では年9.4~9.5万円の負担軽減となり、下位20%(同235万円以下)の世帯の負担軽減額(年3.6~3.8万円)を大きく上回る。消費減税は対象を絞れず、時限措置として減税しても延長を繰り返す恐れがあるなどデメリットが大きい。家計支援策が今後必要になった場合は、これまでの関連施策の効果を踏まえつつ、生活困窮者に絞った現金給付を検討すべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年7月全国消費者物価
単月で見れば弱めの結果も上昇基調は引き続き強い
2025年08月22日
-
2025年7月貿易統計
トランプ関税や半導体関連財の需要一服で輸出金額は3カ月連続の減少
2025年08月20日
-
2025年6月機械受注
非製造業(船電除く)の増加で船電除く民需は3カ月ぶりに増加
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日