「トランプ関税」で議論が進む家計支援策、現金・減税・ポイント、どれが望ましい?

過去の関連施策の効果を踏まえつつ、生活困窮者に絞った現金給付を

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2025年04月16日

サマリー

◆家計支援策に関する国内の先行研究を見ると、限界消費性向(所得が増えたときに、そのうちどれくらいの割合が消費に回るか)は現金給付、所得減税、クーポンで明確な違いは見られず、0.1~0.3程度と推計したものが多い。また、限界消費性向を時系列で推計すると、コロナ禍以降に低下した可能性がある。

◆そのため限界消費性向を0.1~0.2と低めに想定すると、1人あたり3万円を全国民に一律で給付する場合のGDP押し上げ効果は0.3~0.5兆円程度と試算される。3.6兆円という巨額の財政支出を行っても消費喚起効果は極めて小さい。生活の下支えが目的であれば、対象を生活困窮者に絞るべきだ。所得減税では納税額がゼロまたは少額の人への支援が難しいため、現金給付の方が簡素で望ましいといえる。

◆飲食料品の消費税率をゼロにした場合の減税額は、1人あたり3万円の一律給付の所要額に相当する。両者はともに高所得世帯ほど恩恵が大きい。年収上位20%(2024年で年収768万円以上)の世帯では年9.4~9.5万円の負担軽減となり、下位20%(同235万円以下)の世帯の負担軽減額(年3.6~3.8万円)を大きく上回る。消費減税は対象を絞れず、時限措置として減税しても延長を繰り返す恐れがあるなどデメリットが大きい。家計支援策が今後必要になった場合は、これまでの関連施策の効果を踏まえつつ、生活困窮者に絞った現金給付を検討すべきだ。

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