労働供給の質と量をどこまで引き上げられるか

中長期的には潜在GDPを最大12%程度押し上げる可能性

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2023年08月28日

サマリー

◆日本経済が中長期的に一定の活力を維持していくためには、供給力の強化が重要となる。ただし、現状からさらに労働参加率を高めたり失業率を低下させたりするのは難しいため、今後は労働生産性の向上や就労調整の原因となっている制度や慣習の解消が重要となろう。労働市場改革や就労の促進に向け政策効果が発現すれば、中長期的には、潜在GDPが最大12%程度押し上げられる可能性がある。

◆産業間の労働移動を通じた生産性の大幅上昇は見込みにくいが、同じ産業内における生産性の高い企業に労働者が移動すれば、経済全体の生産性も押し上げられるだろう。また、職務給の普及などをきっかけに企業や個人の人的資本投資が活性化すれば、生産性の更なる向上が見込める。

◆公的年金における第3号被保険者制度(3号)は就業調整の要因となっている。一定世代から3号の対象を家族ケア従事者に限定する見直しを行えば、最大60万人の就業時間延長が見込まれる。さらに、週20時間未満の雇用者にも厚生年金の適用を拡大する改革により「収入の壁」を解消できれば、最大226万人の就業時間延長が期待できる。

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