サマリー
◆2023年1月17、18日に開催された金融政策決定会合において、日本銀行は金融政策の現状維持を決定するとともに、「共通担保資金供給オペレーション」の拡充などを決めた。この措置は国債の需給に直接的に介入せずとも、資金供給を通じた裁定取引の増加を通じて、間接的に金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促進する。今後はイールドカーブの「歪み」がどの程度解消するのかが注目される。
◆「経済・物価情勢の展望(2023年1月)」(展望レポート)では2022~24年度の政策委員の大勢見通しの中央値が示された。消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年度比で、2022年度+3.0%、2023年度+1.6%、2024年度+1.8%であった。日本銀行が想定するように2024年度にも1%台後半のインフレ率を保つには、インフレ率が需要の増加によってけん引される必要がある。こうした状況を実現するには、23・24年の春闘において高水準の賃上げ率が実現することや、財を中心に進んでいる価格転嫁の動きがサービスにおいても広まる状況を実現することが必要だ。
◆今回の共通担保資金供給オペの拡充などがイールドカーブ・コントロール(YCC)の持続性を高める目的で実施されたものであることを踏まえれば、黒田東彦総裁の任期中には、少なくともYCCが撤廃される可能性は小さくなったとみている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
-
2025年3月鉱工業生産
自動車工業や電気・情報通信機械工業など10業種が前月から低下
2025年04月30日
-
急速に広がる資格情報等のデジタル化
利用時に気をつけるポイントと求められるデジタルリテラシー
2025年04月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日