サマリー
◆ドル円レートの先行きを考えるため、過去の米国の利上げ局面におけるドル円レートと日米金利差の関係を定量的に整理した。利上げが終了に近づくと、ドル円レートに対する金利差の影響度や感応度は小さくなる傾向が見られる。今回は2023年中に利上げが終了する可能性が高まっており、そうなれば、ドル円レートは金利差以外の経済の基礎的諸条件(ファンダメンタルズ)などの影響も受けて変動するようになるとみられる。
◆バラッサ・サミュエルソン効果を背景に、日本の製造業の競争力低下が今回の円安ドル高を招いたとの指摘がある。だが、2010年代以降の日米の生産性格差は比較的安定しており、最近の円安ドル高に及ぼした影響は限定的と考えられる。為替市場関係者などがしばしば注目する購買力平価に照らせば、現在は大幅な円安水準にある。とりわけ米国が深刻な景気後退に陥る場合、円キャリー取引の巻き戻しもあり、円高ドル安が急速に進む可能性がある。2023年は円安よりも円高のリスクに注意する必要があろう。
◆円安を是正するため日本銀行に対して利上げを求める声が聞かれるが、2%の物価安定目標の達成を見通せるような状況にはなく、当面の間は金融緩和を継続することが望ましい。マクロモデルを用いて試算すると、円安是正のために日本銀行が利上げを行うことは経済への悪影響の方がはるかに大きく、経済的合理性は見出しにくい。金融政策の見直しは為替ではなく賃金の動向に大きく左右され、当面は2023年春闘での賃上げ率が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年12月全国消費者物価
エネルギー価格の低下でコアCPIの伸び率は前月から大幅縮小
2026年01月23日
-
2025年12月貿易統計
主力の米国向け自動車の回復が一巡、25年は資源安で赤字幅縮小
2026年01月22日
-
「飲食料品の消費税ゼロ」「消費税一律5%」の費用対効果と必要性
消費減税ではなく、給付付き税額控除の導入を進めるべき
2026年01月21日
最新のレポート・コラム
-
直近のMBOによる株式非公開化トレンド
事例比較による公正性担保措置の実務ポイント
2026年01月27日
-
大和のセキュリティトークンナビ 第3回 不動産セキュリティトークンとは?(後半)
不動産セキュリティトークンの発行・流通動向、税制
2026年01月26日
-
大和のクリプトナビ No.6 暗号資産制度WG報告と今後の注目点
業界再編や自主規制機関の体制整備、オンラインでの適合性確保に向けた議論が注目点か
2026年01月26日
-
米国アセット・ウェルスマネジメント業界のダイナミズム
~変革を生み出すイノベーションとは~『大和総研調査季報』2026年新春号(Vol.61)掲載
2026年01月26日
-
消費税率の引き下げは本当に低所得世帯支援に最適な政策なのか
2026年01月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日

