サマリー
◆日米の金利差拡大を背景に、円安が進んでいる。ドル円レートは2022年1月初めに116円/ドルを一時上回り、5年ぶりの円安水準となった。こうした中、資源価格の高騰も相まって、円安のマイナス面がプラス面を上回る、いわゆる「悪い円安」を指摘する声が聞かれる。本稿では為替変動が日本経済にどのような影響をもたらし、それがどのように変化したのかを整理した上で、業種別の企業収益や雇用者所得に対する円安ドル高の影響を定量的に検証する。
◆円安で輸出数量が増加して貿易収支が改善するという「Jカーブ効果」は、2010年代以降は表れにくくなった。一方、為替レートが変化しても企業は輸出価格を据え置こうとする動きが広がったことで、円安局面では企業の為替差益が拡大しやすくなった。加えて、企業の海外進出等を背景に、所得収支の改善効果も高まった。円安によるマイナス面としては交易条件の悪化が挙げられるが、マクロで見ればその影響はごくわずかである。もっとも、中小企業非製造業では円安による悪影響が増大している。さらに、消費財の輸入品ウエイトの上昇で、家計の購買力は円安時に低下しやすくなった。
◆こうした円安によるプラスとマイナスの両面の影響を踏まえつつ、マクロモデルを用いて試算すると、円安は日本経済にプラスの効果をもたらすが、以前に比べて効果は縮小したと考えられる。企業収益への影響を直接効果と波及効果に分けて見ると、大企業製造業では直接効果による収益の押し上げ額が大きい一方、非製造業は収益が減少する。ただし波及効果を踏まえれば、非製造業においても円安は収益に対してプラスに働くとみられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
原油高の国内への波及経路と価格転嫁率を踏まえた消費者物価への影響
原油・天然ガス・石炭価格の10%上昇は物価を最大約0.3%押し上げ
2026年04月17日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、円安・ドル高が止まらないのか?
中東情勢の混乱が続く中、円安と物価高・実質賃金低下の悪循環が継続するリスク
2026年04月16日
-
「過去最大の経常収支黒字」に潜む課題
企業の「海外で稼ぐ」姿勢を反映し、投資収益の寄与が拡大
2026年04月16日
最新のレポート・コラム
-
中国:26年1Qは予想外の堅調で5%成長
ただし、中東情勢緊迫長期化なら政府目標4.5%~5%成長は困難に
2026年04月17日
-
原油高の国内への波及経路と価格転嫁率を踏まえた消費者物価への影響
原油・天然ガス・石炭価格の10%上昇は物価を最大約0.3%押し上げ
2026年04月17日
-
令和8年金商法等改正法案 有価証券に関する不公正取引規制等の見直し
市場制度ワーキング・グループの提言がそのまま反映される
2026年04月17日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、円安・ドル高が止まらないのか?
中東情勢の混乱が続く中、円安と物価高・実質賃金低下の悪循環が継続するリスク
2026年04月16日
-
ホルムズ海峡封鎖で変わる世界地図—改めて問われる「成長投資」とは?
2026年04月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

