輸入への依存が増す日本経済

感染症対策、グリーン化、デジタル化への対応で輸入比率が上昇

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2022年01月07日

  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉
  • 経済調査部 エコノミスト 中村 華奈子

サマリー

◆足元で個人消費や設備投資といった内需の回復が緩やかなものにとどまる中、輸入は新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準まで回復し、堅調に推移している。背景には、国内の財供給において輸入への依存が増していることがある。とりわけ消費財や資本財で輸入浸透度が上昇している。

◆品目別に見ると、感染拡大による経済活動の停滞や供給制約などで自動車や家電、コンベヤなどの資本財等、幅広い国産品の出荷が減少する一方、新型コロナウイルスワクチンなどの感染症対策や、太陽電池や電力変換装置、集積回路などの半導体といったグリーン化、デジタル化のための需要に輸入品で対応する動きが広がった。国産品の輸入品への代替が見られた品目は一部の電気機械や石油製品に限られ、必ずしもこの代替が輸入浸透度の上昇を通じてGDPを下押ししたわけではなさそうだ。今後の景気回復や供給制約の緩和に従い、国産品の出荷は徐々に回復するだろう。輸入浸透度は徐々に低下するが、それによるGDPの拡大効果は限定的とみられる。

◆産業連関表を用いて分析すると、国産品の輸入品への代替による影響は軽微である。ただし、グリーン化やデジタル化に不可欠な製品における国産品の国際競争力が低下していることには注意が必要だ。今後、企業の設備投資に占めるグリーン化、デジタル化関連の割合が上昇し、さらに輸入品への依存度が高まれば、生産への影響も増大するだろう。

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