サマリー
◆足元で個人消費や設備投資といった内需の回復が緩やかなものにとどまる中、輸入は新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準まで回復し、堅調に推移している。背景には、国内の財供給において輸入への依存が増していることがある。とりわけ消費財や資本財で輸入浸透度が上昇している。
◆品目別に見ると、感染拡大による経済活動の停滞や供給制約などで自動車や家電、コンベヤなどの資本財等、幅広い国産品の出荷が減少する一方、新型コロナウイルスワクチンなどの感染症対策や、太陽電池や電力変換装置、集積回路などの半導体といったグリーン化、デジタル化のための需要に輸入品で対応する動きが広がった。国産品の輸入品への代替が見られた品目は一部の電気機械や石油製品に限られ、必ずしもこの代替が輸入浸透度の上昇を通じてGDPを下押ししたわけではなさそうだ。今後の景気回復や供給制約の緩和に従い、国産品の出荷は徐々に回復するだろう。輸入浸透度は徐々に低下するが、それによるGDPの拡大効果は限定的とみられる。
◆産業連関表を用いて分析すると、国産品の輸入品への代替による影響は軽微である。ただし、グリーン化やデジタル化に不可欠な製品における国産品の国際競争力が低下していることには注意が必要だ。今後、企業の設備投資に占めるグリーン化、デジタル化関連の割合が上昇し、さらに輸入品への依存度が高まれば、生産への影響も増大するだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
経済指標の要点(8/19~9/12発表統計分)
2025年09月12日
-
2025年9月日銀短観予想
製造業で業況判断DI(最近)は改善も、先行きへの警戒感は強い
2025年09月10日
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日